さくちゃんの生きもの便り

Ikimono Dayori sono75

横沢入 生物季節(チョウ類編)

晩春(5月)

晩春の横沢入は、日々移り変る雑木林や谷津田の景色に目を奪われます。

強い日差しが降り注ぎ、水面は輝き、谷津田を取り囲む雑木林は萌黄の中に藤紫が浮かび上がり、フジの開花が始まったことを知らせてくれます。

 

晩春の横沢入1 晩春の横沢入2 晩春の横沢入3 晩春の横沢入4

晩春の横沢入

 

クロコノマチョウ

クロコノマチョウ

成虫で越冬したチョウの中で、最も遅く姿を表すのはジャノメチョウ科のクロコノマチョウです。

クロコノマチョウは、ジャノメチョウ科のなかでは大型のチョウなのですが、翅の色が表面裏面共に茶褐色から黒褐色で、しかも雑木林等の薄暗い林床に止まって休んでいることが多いため、目立たないチョウです。

通常年3回発生し、新成虫は6月〜11月に姿を見かけますが、秋期に個体数が多くなります。 詳しくは、「生きもの便り68 クロコノマチョウの記憶」を御覧下さい。


 

谷津田周辺の土手や草地はハルジオンやムラサキケマンが、林縁にはウツギやイボタが開花し、多くのチョウが吸蜜に訪れるようになります。

谷津奥部の林縁や草地の上を、翅を広げ滑空するようにゆるやかに飛び、ムラサキケマンやハルジオンなどの花に吸蜜に訪れるのはウスバシロチョウです。

翅が白いためシロチョウの仲間と勘違いされる方も多いのですが、アゲハチョウの仲間です。

シロチョウの仲間とは、大きさが少し大きいこと、鱗粉が少なく翅が半透明であること、胴体に黄色い毛が生えていることなどで区別がつきます。

ウスバシロチョウは、年1回4月下旬から5月にかけて発生します。

 

ウスバシロチョウウスバシロチョウ

ウスバシロチョウ

 

アオスジアゲハ アオスジアゲハ

同じアゲハチョウの仲間で、比較的広い草地や林縁で、敏感に花から花へと飛び交っているのは、黒褐色の地色に青色の帯の翅が印象的なアオスジアゲハです。

アオスジアゲハは、年3回発生し、秋期まで観察することができます。

横沢入では、今までに紹介したウスバシロチョウ、アオスジアゲハ、キアゲハ、アゲハ(ナミアゲハ)の4種に加え、モンキアゲハ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、オナガアゲハ、カラスアゲハの5種のアゲハチョウの仲間(合計9種)を観察することができます。


クロアゲハとオナガアゲハはよく似ていますが、オナガアゲハは、クロアゲハより翅形が細長いこと、尾状突起が長く先端が内側に曲がることで区別できます。

横沢入では、クロアゲハは通常年3回発生し9月ごろまで、オナガアゲハは年2回発生し8月下旬ごろまで観察することができます。

 

オナガアゲハ

オナガアゲハ

クロアゲハ

クロアゲハ


 

タテハチョウの仲間のヒメアカタテハキタテハ、シジミチョウの仲間のトラフシジミ、セセリチョウの仲間のダイミョウセセリキマダラセセリなども頻繁に訪花し吸蜜しています。

ヒメアカタテハは全国的にみても個体数の多いチョウではありませんが、世界中に広く分布する種(汎世界種)の一つです。

タテハチョウの仲間ではヒメアカタテハに似たアカタテハ、黒褐色の地色に白斑が並ぶイチモンジチョウコミスジ、ミスジチョウ、オオミスジの4種、季節型(春型・夏型)で斑紋が大きく異なるサカハチチョウなどを観察することができます。

イチモンジチョウとコミスジは、通常年3回発生し9月下旬ごろまで観察することができますが、ミスジチョウは5月下旬〜6月中旬、オオミスジは6月下旬〜7月の年1回発生です。

オオミスジは、あきる野市においては1980年代に記録があるものの、1990年以降記録が無かった種です。2007年7月に飛翔中の1♀を目視確認したため、2008年に集中的に調査を行った結果、2個体を確認しました。近隣に生育する半野生化したウメ、龍性寺や民家に植栽されているウメで発生しているものと考えられますが、一次的に発生した可能性もあります。

サカハチチョウは、年2回発生し、春型は黒褐色地色に赤橙色の斑紋が出現するのに対し、夏型は黒褐色地色に白色の斑紋が出現するため、一見別種のように見えます。

トラフシジミは年2回発生し8月ごろまで観察することができます。

 

ヒメアカタテハ

ヒメアカタテハ

キタテハ

キタテハ

イチモンジチョウ

イチモンジチョウ

コミスジ

コミスジ

サカハチチョウ雄

サカハチチョウ ♂

サカハチチョウ雌

サカハチチョウ ♀

トラフシジミ

トラフシジミ

ベニシジミ

ベニシジミ

 

セセリチョウの仲間は小さく素早く飛び、よく似た種が多いため観察や同定が難しいグループです。

横沢入では、アオバセセリ、ミヤマセセリ、ダイミョウセセリ、ヒメキマダラセセリ、キマダラセセリ、ホソバセセリ、コチャバネセセリ、オオチャバネセセリ、イチモンジセセリの9種を観察することができます。

ダイミョウセセリは黒褐色に白斑があり、葉上に翅を開いて止まるため区別することが出来ます 。

 

ダイミョウセセリ

ダイミョウセセリ

キマダラセセリ

キマダラセセリ

ヒメキマダラセセリ

ヒメキマダラセセリ

オオムラサキ幼虫

オオムラサキ(幼虫)

 

雑木林の葉が開き、薄暗くなった林内や林縁では、ジャノメチョウの仲間のサトキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、ヒカゲチョウ、コジャノメ、ヒメジャノメなども姿を表します。

オオムラサキは、新葉が大きく開いたエノキの葉に座を作って止まっています。

脱皮し、体色は緑色になっていました。

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