Ikimono Dayori sono75
横沢入 生物季節(チョウ類編)
春(4月)
春期の横沢入は、生きもの達の息吹を最も感じる季節です。
雑木林やヤナギ林の芽吹きにより丘陵地が萌黄色に包まれ、ヤマザクラの開花が彩りを添えています。
谷戸田の畦道や土手にはレンゲソウやタンポポが咲き誇り、林床ではコナラが一斉に発芽しています。
このころになると、山菜取りや散策、生きもの観察などを目的にして多くの利用者が横沢入を訪れるようになります。
早春の横沢入
コナラ
成虫で越冬したキタテハやルリタテハに混じって、同じタテハチョウ科のヒオドシチョウを見かけることがあります。
ヒオドシチョウは、年1回5月下旬〜6月に発生しますが、横沢入においては、春期に成虫越冬した個体を稀に観察することができます。
ルリタテハはサルトリイバラに産卵し、既に孵化が始まっているようです。
ヒオドシチョウ
ルリタテハ(初齢幼虫)
卵で越冬したウスバシロチョウは早春に孵化し、林縁にひっそりと生育する葉を開いたばかりのムラサキケマンの葉や花を摂食して成長し、既に終齢幼虫になっています。
ウスバシロチョウ(終齢幼虫)
田植え前の谷津田の畦や草地の上を、翅を小刻みに動かしながら直線的に飛んでいるのはツマキチョウです。
ツマキチョウは、蛹で夏・秋・冬を過し、年1回春期のみに発生するシロチョウの仲間、さくちゃんお気に入りのチョウの一つです。
この季節の横沢入では、ツマキチョウ、スジグロシロチョウ、モンシロチョウと、一見よく似た3種を観察することができますが、ツマキチョウは前翅頂部が嘴状に尖っていることで区別することができます。
ツマキチョウ ♂
ツマキチョウ ♀
スジグロシロチョウ
土手の草地や田植え前の谷津田周辺を敏速に飛び、花から花へと吸蜜を繰り返しているのはベニシジミとヤマトシジミです。
ベニシジミは、年5〜6回の発生を繰り返し秋期まで観察することができますが、春型は翅表面の赤燈色斑が発達しており、最も綺麗な季節型です。
ベニシジミと同じような環境をゆるやかに飛んでレンゲやヘビイチゴ、オオイヌノフグリなどの花で吸蜜している翅表面がブルーのチョウはヤマトシジミとツバメシジミです。
ヤマトシジミやツバメシジミもベニシジミと同様に秋期まで観察することができます。
両種とも雄の翅表面は青藍色、雌は暗褐色ですが、ツバメシジミは後翅に尾状突起があり後翅裏面肛角部に赤橙色斑があることで区別できます。
横沢入にはこれらによく似た種で、年1回春期のみに発生するスギタニルリシジミも生息していますが個体数が少なく、なかなか観察することができません。
ベニシジミ
ヤマトシジミ ♂
ツバメシジミ
キアゲハ
土手の草地や谷津田周辺で、吸蜜を繰り返している大きなチョウはキアゲハです。
オオムラサキ(幼虫)
横沢入にはアゲハ(ナミアゲハ)も生息していますが、キアゲハは前翅表面基部の黒斑が三角形状になり、地色も黄色味が強いことで区別できます。
エノキの根元の落葉でひっそりと越冬していたオオムラサキとゴマダラチョウの越冬幼虫はエノキの芽吹きに合わせるように幹を登り、枝の分岐部に吐糸して座を作っています。
新葉が大きく開くまで、ここから移動して新葉を摂食して成長します。
レンゲ(ゲンゲ)