Ikimono Dayori sono75
横沢入 生物季節(チョウ類編)
初夏(6月)
初夏の横沢入は、濃い緑に包まれ、湿度が高く入梅が近づいていることを知らせてくれます。
谷津田の田植えも始まり、水面が輝きを増しています。
湿性草地のヨシやガマが背丈度に延び、強い日差しを受け草熱れが体を包みます。
初夏の横沢入
初夏の雑木林の樹冠を彩るチョウは、ミドリシジミの仲間、西風の神ゼフィルス(Zephyrus)です。
ミドリシジミの仲間(ミドリシジミ族)は、横沢入では決して個体数は多くありませんが、ウラゴマダラシジミ、ミズイロオナガシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミの5種を観察することができます。
どの種も、年1回、5月下旬〜6月に発生します。
ウラゴマダラシジミは最も早く5月下旬から発生し、食樹のイボタやクリ、ウツギなどに訪花し吸蜜します。
ミズイロオナガシジミは6月上旬から発生し、最も個体数が多く雑木林の林縁や下草などで観察することができます。
アカシジミとウラナミアカシジミは、両種とも橙色の派手な地色をしているのですが、ウラナミアカシジミは翅裏面に波状の黒斑があることで区別することが出来ます。
アカシジミは5月下旬ごろから、ウラナミアカシジミは6月上旬ごろ羽化します。
オオミドリシジミは、横沢入では最も個体数が少なく、ミドリシジミの仲間では最も遅く6月下旬〜7月上旬に羽化します。
雄の翅の表面は青味がかった緑色で弱い光沢があるのに対して雌の翅の表面は茶褐色です。
ミズイロオナガシジミ
アカシジミ
ウラナミアカシジミ
オオミドリシジミ ♀
明るい樹冠や林縁から薄暗い林内や林縁に目を向けてみましょう。
薄暗い中をゆるやかに飛んでいる小さなチョウはゴイシシジミです。
翅裏面の地色が白く黒色斑が碁石のようで目立つため、他種と間違えることはありません。
幼虫は肉食性で、ササやタケ類などにつくアブラムシを捕食するという変わり者です。
横沢入では個体数は多くありませんが5月中旬〜10月下旬まで観察することができます。
ゴイシシジミ
翅の地色が表裏とも褐色系の地味なチョウはジャノメチョウの仲間です。
横沢入にはヒメウラナミジャノメ、クロヒカゲ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ、コジャノメ、クロコノマチョウの7種が生息しています。
ヒメウラナミジャノメは、林間や林縁をゆるやかに飛んでいますが、明るい草地にも良く現れます。
通常年3回発生し、4月下旬〜10月上旬まで観察することができます。
クロヒカゲとヒカゲチョウはよく似た種ですが、クロヒカゲの方が地色が濃く前翅裏面を斜に走る黄白帯が亜外縁の眼状紋に接近することなどで区別することができます。
クロヒカゲは5月上旬〜10月上旬、ヒカゲチョウは5月下旬〜10月上旬まで観察することができます。
サトキマダラヒカゲは年2回発生し、5月上旬〜9月中旬まで観察することができます。
樹液や腐果、獣糞などに集まり吸汁しているところを見かけます。
ヒメジャノメとコジャノメもよく似た種ですが、コジャノメの方が地色が濃く、前後翅裏面の中央を走る帯の色がやや紫色をおびることなどで区別することができます。
ヒメジャノメは5月中旬〜11月上旬、コジャノメは5月上旬〜8月下旬まで観察することができます。
ヒメウラナミジャノメ
クロヒカゲ
ヒカゲチョウ
サトキマダラヒカゲ
ヒメジャノメ
コジャノメ
林縁に生育するオカトラノオの花が目に付くようになってきました。
オカトラノオの花には多くのチョウが吸蜜に訪れるのですが、最も目立つチョウは、ヒョウモンチョウの仲間のメスグロヒョウモンです。
メスグロヒョウモンは、雄の地色は多くのヒョウモンチョウの仲間と同じように橙色なのですが、雌は青味がかった黒褐色のため別種のように見えます。
年1回6月に発生しますが、盛夏は休眠して過し秋になって再び姿を表します。
メスグロヒョウモン ♀
オオムラサキの幼虫は、エノキの葉をたくさん食べて大きく育ち終齢幼虫になっていました。
いよいよ夏本番の季節です。
オオムラサキ(終齢幼虫)
ウラゴマダラシジミ ♀