その35 東南アジア・珍奇植物観察の旅(ボルネオ島キナバル山編)-6
Ikimono Dayori sono35
 東南アジア・珍奇植物観察の旅(ボルネオ島キナバル山編) Page6

公園本部から見たキナバル山山頂公園本部から見たキナバル山山頂 木の間越しに見え隠れするキナバル山山頂部
公園本部から見たキナバル山山頂
木の間越しに見え隠れするキナバル山山頂部

 さて、今日の目的は、下部山地林から上部山地林に生育する植物や標高3000m近くの蘇苔林(雲霧林)に多くあるウツボカズラの群生地を観察することです。日没前に下山するため、のんびりはできません。
 公園本部で植物に詳しいガイドを手配し、送迎車で標高1830mに位置する発電所(Power Station)横の登山ゲート(Timpohon Gate)に向かいます。
 アスファルトで舗装された車道なのですが、珍種のカザリシロチョウのシンガプーラシロチョウDelias singhapura)やキネラスケンスカザリシロチョウDelias cinerascens)と思われるもシロチョウも時折飛んでいます。しかし、国立公園内は動植物の採集は禁止されているため、ぐっと我慢します。
シンガプーラカザリシロチョウ
キネラスケンスカザリシロチョウ
 上:シンガプーラカザリシロチョウ
 下:キネラスケンスカザリシロチョウ

ノボタン属の植物  ゲート近くで車を降りてカメラや野帳を準備します。キナバル山の雄大な姿が間近に見え隠れします。道路脇に目を移すとノボタン属の仲間Melastoma sp.)が紫色の花を咲かせています。
 登山ゲートを潜って、登山道をいったん下り谷を越えると本格的な登り道になります。木の間越しにキナバル山の山頂部の岩が見え隠れし、下部山地林は光に映えて輝いて見えます。
ノボタン属の植物
素晴らしい自然景観です。
 着生ランなどを観察しながら一歩一歩標高を稼いでいきます。登山道がしっかりしているため観察や撮影に集中できます。
登山ゲート付近の下部山地林
着生植物に覆われた枝

登山ゲート付近の下部山地林

着生植物に覆われた枝


 標高2000m付近から徐々に樹高が低くなり、着生植物が一段と増えてきます。上部山地林の特徴です。登山道のすぐ脇で15cm程度の捕虫嚢を持ったテンタキュラータ・ウツボカズラNepenthes tentaculata)を見つけました。久しぶりに野生のウツボカズラを観察できて気合いが入ります。
 ウツボカズラは、葉が変形してできた捕虫嚢で昆虫などの小動物を捕らえて消化・吸収して成長する食虫植物です。
 ウツボカズラ属の仲間は熱帯アジア、北オーストラリアおよびマダガスカルに約70種が分布しています。その中でボルネオ島には全体の約40%、30種が分布しており、キナバル山では15種の生育が確認されています。キナバル山はウツボカズラの宝庫でもあります。
テンタキュラータ・ウツボカズラ
右:テンタキュラータ・ウツボカズラ 拡大写真は別アングルです。

 樹木の幹や枝には着生ランのデンドロキルム属Dendrochilum sp.)が小さな花を付けています。着生したコケに実生木も生えたりして原形をとどめていない 樹木が沢山あります。

デンドロキルム属のラン デンドロキルム属のラン
着生植物に覆われて原形を止めない樹木
デンドロキルム属のラン 上部山地林
デンドロキルム属のラン 
上:着生植物に覆われて原形を止めない 樹木
下:上部山地林


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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