Ikimono Dayori sono67
沖縄本島ラナウイルス・カエルツボカビ症調査協力紀行
軽く夕食を済ませて、夜間観察用具の懐中電灯、カメラのストロボに電池を入れて準備完了。
午後7:30にホテルを出発。
県道2号から林道を北上します。
入梅しているにもかかわらず雨が降っていないため、林道はカラカラ状態です。
期待薄ですが、奥集落までゆっくり車を走らせます。
いつもヒメハブが潜んでいる雨水桝の近くに車を停めて、吉田君に見てきてもらいます。
「さくまさん・・・・いますよー」の声で車から降りて観察開始です。
ヒメハブは、ヤマハブ属の毒蛇なのですが、地元の言葉で「ニーブヤー(寝坊者)」と呼ばれるほど行動は緩慢でおとなしいため、危険なヘビではありませんが、知らずに踏みつけたりすると咬まれることがあるため注意が必要です。
ヒメハブ(Ovophis okinavensis)
ヒメハブを撮影中の吉田君 | ヒメハブをいじりまわす吉田君 |
吉田君は、手作りのシェルターを持って、ヒメハブに5cm位まで近寄って撮影しています。
なるほどねー こうやって目いっぱい近寄って広角レンズで撮影すると、生息環境も写し込む事ができそうです。
別の場所でも、少し大きなヒメハブを見つけました。
ここでも、シェルターを使ってヒメハブを撮影したり、捕まえて触感を楽しんだりしている吉田君なのでした。
その後はほとんど生きものを観察できないまま奥川が併走し、沢から取水している水汲み場まで到着しました。
この場所は、いつも路面や路肩が湿っているので、安定してカエルを観察することができる場所です。
懐中電灯片手に湿り気のある路傍を歩きます。
リュウキュウカジカガエルが驚いて飛び跳ねます。
リュウキュウカジカガエルは、トカラ列島口之島以南の南西諸島に広く分布し、海岸付近からの集落や農地、山地部の樹林地まで幅広い環境に普通に生息しています。
ナミエガエルも姿を表してくれました。
以前はこの場所で幼体から成体まで多くの個体を観察する事ができたのですが、最近はなかなか観察ができなくなってしまいました。
ナミエガエルは、山地渓流性で山地の源流部に生息し水生傾向の強いカエルです。
沖縄島北部の固有種で県の天然記念物に指定されています。
リュウキュウカジカガエル(Ovophis okinavensis)
ナミエガエル(Limnonectes namiyei)
路面の乾燥が激しいので、これ以上の両生類の観察は期待できそうにありません。
そろそろクロイワトカゲモドキの観察に切り替えることにします。
助手席に座っている吉田君に、トカゲモドキを捜すコツを教えて、ゆっくり車を走らせます。
走り始めて5分もたたない内に、懐中電灯で崖を照らしていた吉田君がクロイワトカゲモドキを見つけました。
トカゲモドキは、日本が誇るキョクトウトカゲモドキGoniurosaurus属の一種Goniurosaurus kuroiwaeで、5亜種に分けられています。
沖縄島に生息しているのが、基亜種のクロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae)です。
完全な夜行性で、主に湿潤な樹林内や沢周辺、石灰岩の洞穴などに生息し、昆虫やクモ類、多足類、陸生甲殻類などを捕食しています。
危険を感じると尻尾を持ち上げて揺り動かして注意をそらします。
尾は簡単に自切するようで、再生尾の個体を多く見かけます。
クロイワトカゲモドキ(基亜種)は、背面の斑紋に地域変異があり、得に沖縄島の南部産の個体とヤンバルのような北部産では顕著な違いがあります。
今夜は幼体から成体まで15匹以上の個体を観察することができました。
文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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