さくちゃんの生きもの便り

Ikimono Dayori sono67

沖縄本島ラナウイルス・カエルツボカビ症調査協力紀行

比地川の景観
比地川の景観

それは千石先生の電話から始まった。

「もしもし、さくちゃん、僕の還暦の祝いを兼ねた講演会があるんだけど、よかったら来ない。情報交換会に来てくれた学生君達にも声をかけてよ」

「チョコエッグ」シリーズ等で著名な造形作家の松村しのぶさんや東京農業大学野生動物研究会の吉田君や大塚君に声をかけて、講演会当日は一人で会場に向かいました。

会場に到着すると吉田君と大塚君が近寄ってきて「佐久間さん・・・・めちゃくちゃアウェーなんですけど」と心細そうな声で話しかけてきました。

周りを見渡すと、太田先生や疋田先生を初めとする著名な方々が揃っているのですから無理はありません。

麻布大学の宇根先生や爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会(SCAPARA)の方々も出席されているようです。

有意義な記念講演の後は、記念撮影と立食パーティーです。

千石先生や太田先生達と話をした後で、メール等で情報交換させていただいている宇根先生にカエルツボカビ症やラナウイルスの状況を教えてもらうことにします。

沖縄における確認状況などを色々とお聞きした後で「次回 沖縄へは、おそらく初夏に行くと思うので、カエルツボカビ症やラナウイルスの検体を採取してきますよ・・・・・」と伝えたところ「私も沖縄で調査したいと思っているのですが・・・・・一緒に行ってもいいですか?」と思い掛けない返事。ちょっとビックリして、思わず「ど・ど・どうぞ 予定が合えばご案内しますよ・・・・・・・」と答えるさくちゃんなのでした(笑)。

 

それから約1ヶ月強、メールと電話で日程や工程を調整し、5月28日から4日間の日程で沖縄本島のラナウイルス・カエルツボカビ症調査を行うことになりました。

メンバーは、以前から「今度行く時には連れて行ってあげるよ」と約束していた、西多摩自然フォーラムメンバーで東京農業大学野生動物研究会の吉田君、29日から合流しラナウイルス分布調査の検体採取とカエルツボカビ症のスワブ調査を行なう宇根先生とアシスタント役の旦那様、案内役と運転手に撤する覚悟のさくちゃんの4人です。

また、30日の夜は、友人の動物写真家「ばいかだ」こと徳田君や、たまたま社員旅行で沖縄に行くことになっている西多摩自然フォーラムメンバーの小勝さんも合流することになっています。

どんな旅になることやら・・・・今から楽しみです。

5月28日

4時半に起床。

妻に羽田空港まで送ってもらい、吉田君と合流。

6:20発那覇行きに乗り込み9:00に那覇空港に到着しました。

空港で機内預かりの荷物を受け取り、予約していたレンタカーに乗り込みます。

高速道路を使って沖縄北ICまで移動し、まずは中部産のイボイモリの観察です。

車を停め、吉田君に生息環境の説明をしながら樹林を下り、渓流に分け入り調査開始です。

いくつかの石や古タイヤをはぐると、いました いました。

イボイモリの成体です。

渓流の水溜りには、複数の幼生も確認できます。

周りを見渡して吉田君を捜すと、どうやら樹林内でクモの撮影を行なっているみたいです。

何枚かシャッターを切った後で、吉田君を呼び、その場を空け渡し幼生の写真撮影に移ります。

水が濁らないように注意深く沢に入り写真撮影を行ないます。

成体と幼生が観察できたので、午後から調査予定の北部産イボイモリポイントへ移動することにします。


イボイモリ成体イボイモリ成体
石の下に隠れていたイボイモリ成体(Echinotriton andersoni)
イボイモリ成体と幼生イボイモリ成体と幼生
イボイモリ成体と幼生

国道58号を北上し、北部ヤンバルの森に向けて車を走らせます。

途中、大宜味村の道の駅でバナナと飲料水を買い込み、再び国道58号を北上し、県道2号から目的の沢の近くに車を停めます。

中部で使用した調査用具や長靴を消毒し準備完了。

北部産イボイモリの調査開始です。

未舗装の林道には、年々粗大ゴミの不法投棄が増えているのが気になりますが、このようなゴミの下もイボイモリの隠れ処になっています。

吉田君に手伝ってもらい、大きな冷蔵庫をひっくり返して見ます。

やっぱりいました。しかも2匹。雌雄1匹ずつがなかよく並んでいます。

沖縄本島の個体は黒褐色の個体が多いのですが、この雄は珍しく茶褐色の個体です。

午前中に観察した中部産イボイモリとの違いや北部産イボイモリの特徴を説明し、写真撮影です。

二人で長い間写真撮影していると、自分が置かれている状況に気付いたのか、あわててガレ場の石の間に隠れてしまいました。

冷蔵庫の下に隠れていた成体(♂♀) ガレ場の石の間に潜り込む茶褐色の成体♂
冷蔵庫の下に隠れていた成体(♂♀) ガレ場の石の間に潜り込む茶褐色の成体♂

ここでの撮影はこれぐらいにして、先を急ぐことにしましょう。

未舗装の林道は、ここ数年高茎草本が生い茂っていたのですが、今年になって草刈が入ったようで、比較的歩きやすく、イボイモリも捜しやすくなりました。

トタテグモの巣穴
トタテグモの巣穴

林道脇の石をはぐりながら沢に向けて歩きます。

林道脇の細流で幼生を探してみますが水が濁って見つけることができません。

イボイモリの成体は、これはと思う石の下で、次々と確認できます。

吉田君は、林道脇の崖地に顔を近づけ、オキナワトタテグモ?を観察し写真撮影に夢中です。

この崖には、トタテグモが、たくさん生息しているようです。

吉田君から巣穴の説明を受けて、崖を捜してみることにします。

なるほど、微妙な条件の違いで多い少ないはありますが、簡単に巣穴を見つけることができました。


その後も、イボイモリを観察しながら沢に到着。

ここからは、沢歩きで定期的に調査を行っているポイントに向かいます。

時々姿を表すシリケンイモリは、ラナウイルス感染状況調査のために捕獲します。

トタンや石の下の調査を行い、3時間程度の調査でしたが、15匹のイボイモリを観察することができました。

多くのイボイモリを観察でき、写真撮影もできたので大満足です。

昼間の調査はこれぐらいにして、ホテルでチェックインを済ませ、夜間調査に備えることにしましょう。


北部産イボイモリ成体北部産イボイモリ成体北部産イボイモリ成体北部産イボイモリ成体北部産イボイモリ成体北部産イボイモリ成体
北部産イボイモリ成体(Echinotriton andersoni
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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)

お便りの宛先はdelias@ss.iij4u.or.jpです

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