その57 冬の沖縄本島生きもの観察紀行−3
Ikimono Dayori sono57
冬の沖縄本島生きもの観察紀行 Page3

 ナミエガエルLimnonectes namiyeiは、イシカワガエルと同様に、沖縄島北部の固有種で県の天然記念物に指定されています。
 山地渓流性のカエルで、山地の源流部に生息し水生傾向の強い種ですが、降雨時は林道にも姿を現します。
 多くの個体を観察し、最近お気に入りショットの正面顔やお尻の写真を含めて、おおくの写真を撮影することができました。

ナミエガエル ナミエガエル
ナミエガエル ナミエガエル
ナミエガエル(Limnonectes namiyei

 ホルストガエルRana holstiは、沖縄島北部と渡嘉敷島の固有種で、上記2種と同様に県の天然記念物に指定されています。
 繁殖期の夏季には、渓流の水溜り付近でグゥー・グゥー・グゥー・グヲンッと、とてもとカエルとは思えない鳴き声で楽しませてくれるのですが、今は非繁殖期のため鳴き声を聞くことはできません。
 奄美大島と加計呂麻島に近縁種のオットンガエルが生息しており、ホルストガエルと同じように、前足には5本の指があります。

ホルストガエル ホルストガエル
  ホルストガエル(Rana holsti

 カエルで最後に姿を現してくれたのは、リュウキュウアカガエルRana okinavanaです。

リュウキュウアカガエル  リュウキュウアカガエルは、奄美大島、徳之島、沖縄島、久米島に分布し、平地から山地までの森林や水辺に生息し、以前は比較的普通に観察することができたのですが、近年は、生息個体数が極端に減少しているようで、ここ数年、観察や撮影する機会の少ないカエルでした。
 この時期は、リュウキュウアカガエルの繁殖期に当たるため、観察できることを楽しみにしていたカエルの一つです。
 産卵前のお腹がパンパンの雌を撮影することができました。
リュウキュウアカガエル(Rana okinavana


 爬虫類では、おなじみのアカマタDinodon semicarinatumと綺麗なリュウキュウアオヘビCyclophiops semicarinatusが姿を現してくれました。
 アカマタは、奄美諸島・沖縄諸島の大半の島々に分布する固有種で、沖縄本島でも多く見ることができるヘビです。幅広い食性の持ち主で魚、カエル、小鳥、ネズミなどを食べますが、特にトカゲ・ヤモリ類やヘビ類を好む傾向があります。
アカマタ
アカマタ(Dinodon semicarinatum

 リュウキュウアオヘビは、トカラ列島の宝島・小宝島と奄美諸島・沖縄諸島に広く分布する、エレガントなヘビです。
 ミミズを食べるため、今晩のように雨が降りミミズが路上に這い出しているような状況下で多く見ることができます。

リュウキュウアオヘビ リュウキュウアオヘビ
リュウキュウアオヘビ(Cyclophiops semicarinatus

 両生・爬虫類以外で、最も幻想的に姿を現してくれるのは、なんと言ってもアマミヤマシギScolopax miraです。
 アマミヤマシギは、奄美大島、加計呂麻島、徳之島、沖縄島、渡嘉敷島に生息する日本固有のシギの仲間です。日中はほとんど活動せずに夜になると活動をはじめ、湿地や水たまりなどの地面に嘴を差込みミミズなどを食べます。リュウキュウアオヘビと同様に雨が降りミミズが路上に這い出しているような状況下で多く見ることができます。
 霧が立ち込めた林道で、ヘッドタイトに照らし出されるアマミヤマシギの姿は格別です。

アマミヤマシギ アマミヤマシギ
アマミヤマシギ(Scolopax mira

 このアマミヤマシギやヤンバルクイナなど地上を徘徊する鳥類や両性・爬虫類ならびに小型哺乳類は、外来生物のマングースやノネコにより捕食されることが多く、急速に生息個体数が減少しています。
 開発や伐採による生息環境の消失・縮小・分断や質的悪化、ならびに外来生物による捕食圧が、沖縄の希少な生きものたちの生息に大きな影響を与えているのです。
 時計を見ると、午前3時を回っています。今晩の観察はこれで終了にして、午後からTimさん・Maxさんと合流して行う予定のイボイモリ観察に備えることにしましょう。

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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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