その26 秋の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行-4
Ikimono Dayori sono26

秋の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行 Page4

 今日の夜間調査の目的は、昼間入った渓流のポイントでイシカワガエルを見付けて2人に見せてやることです。いつもの場所に車を停めて、夜間調査の身支度と撮影機材をセットして出発です。10月も下旬だというのに車の周りを少ないながらホタルが飛んでいます。
 ライトで足下を照らしながら、ゆっくり渓流に下りていきます。ニホンカジカガエル(リュウキュウカジカガエル)やヒメアマガエルが足下から跳ねて草むらに逃げ込みます。今年上陸したと思われる小さな幼体も沢山います。

 渓流に入って最初に見付けたのが背中が緑色タイプのハナサキガエルです。このカエルは前足が長いせいか、他のカエルより頭を高くした独特の姿勢が特徴的なため、遠くからでもすぐに本種だと確認できます。
 このハナサキガエルは琉球列島の固有種なのですが、種分化が進んでいて、沖縄本島のヤンバルにハナサキガエルが、奄美諸島にはアマミハナサキガエルが、八重山諸島にはオオハナサキガエルとコガタハナサキガエルがそれぞれ分布しています。
ハナサキガエル♂(緑色タイプ)

 続いて見つけたのが昼間にも見付けた沖縄諸島固有種のナミエガエルです。このカエルは、ハナサキガエルとは対照的に渓流の水中生活に適応してか、平面的な印象の頭でっかちの不思議な容姿のカエルです。渓流でエビやカニを捕食するのに適している体型なのかもしれません。

ナミエガエル
 次ぎに見付けたのはホルストガエルです。ホルストガエルはナミエガエルと同様に世界中で沖縄諸島にしか生息していない大型のカエルなのですが、見付けたのは可愛らしい亜成体す。奄美諸島にはよく似たオットンガエルが分布しています。
ホルストガエルの幼体

 さて、極めつけはイシカワガエルの登場です。イシカワガエルは日本で最も美しいといわれる大型のカエルで、世界中で沖縄本島北部と奄美大島にしか分布していません。沖縄本島や奄美大島で最も見付けにくいカエルでもあります。
 一晩で、沖縄本島に分布する県指定の天然記念物3種を見られれば、2人もきっと満足したことでしょう(といっても、イシカワガエルを見付けたのは、しろちゃんともりちゃんだったのだけれど)。

イシカワガエルの幼体
 一応の目的を達せられたので、渓流での調査を切り上げて引っ返すことにします。渓流内を歩くたびに足下からオレンジ色の目を光らせながらテナガエビが沢山逃げていきます。
 車に戻って休憩してから、今度は林道を車で流して生きものを探すことにしました。でも、道路は乾燥し、気温もかったため林道に生きものはほとんど出てきていませんでした。時計を見ると1時を回っています。今日は朝早くから移動だったし、明日は早朝から鳥類の観察予定だったので、早々に切り上げて明日に備えました。
テナガエビ



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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