Ikimono Dayori sono80
2012年梅雨明け直後の沖縄本島両生爬虫類観察紀行−5
水辺の生きものを観察しながら進んでいると、足元で何かが動きました。
リュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica)です。
リュウキュウヤマガメは、沖縄島・渡嘉敷島・久米島の固有の陸亀で、国指定の天然記念物です。
昼行性の傾向が強く、昼間薄暗い林内や渓流を歩いている時に見かけることが多いのですが、夜間においても渓流沿いで見かけることがあります。
リュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica)とそれを撮影する中川君
リュウキュウヤマガメは、驚くと首を縮めてしまうためうまく撮影することができないことが多いのですが、この個体は首を縮めることも少なく撮影協力し、その後は渓流を泳いで対岸に逃げて行きました。
イボイモリを観察しながらいつもの折り返し地点に到着。ザックを下して各々が生きもの観察を行います。
ここでいがちゃんがオキナワイシカワガエル(Odorrana ishikawae)の幼体を見つけました。
荒井さんは、もくもくとクモ探しです。多数のクモを観察しているようですが、ササキハシリグモやオキナワキムラグモ、コケオニグモなどを一時捕獲して見せてくれました。
ササキハシリグモは、座津武川などの限られた流域でしか生息が確認されていない比較的珍しいクモで、そのために夜間調査で座津武川源流域に行く予定だったのですが、随分離れた与那川源流域であっさり見つけることができました。
オキナワイシカワガエル(幼体)(Odorrana ishikawae)とそれを撮影するターチ
オキナワキムラグモ(幼体)
コケオニグモとそれを撮影する新井さん
午後からは昼食を兼ねて東村のイボイモリポイントへ移動する予定なので、与那川源流域での観察はこれぐらいにして、車を停めてある場所まで引き返すことにします。
車に戻る途中や車での移動中にガラスヒバァを見つけて撮影しました。
ガラスヒバァを撮影するメンバー
東村の高江にある「カフェ山甌」で昼食を取り、周辺を少し散策しているとサクラランが生育していることに気づきました。
サクラランは、ランと名前が付いていますが、ガガイモ科の多年草です。
アジア南東部の熱帯から亜熱帯に分布し、日本においては九州南部や琉球列島の林内に生育しています。
花は、初夏から秋にかけて咲き、淡紅白色で芳香があります。
オリイオオコウモリが大径木に止まって、時々ギイギイと鳴いています。
オリイオオコウモリは、クビワオオコウモリの亜種で、沖縄本島とその周辺の小島に分布しています。
主に夜行性で、果実を食べています。
さて、そろそろイボイモリが多産する沢へ移動することにしましょう。
いつものように、手鍬を使って石をはぐっていきます。
メンバーに「ヒメハブがいることがあるから気を付けてね〜」と言った矢先にヒメハブが姿を現しました。
ヒメハブは、ヤマハブ属の毒蛇なのですが、地元の言葉で「ニーブヤー(寝坊者)」と呼ばれるほど行動は緩慢でおとなしいため、危険なヘビではありませんが、知らずに手を近づけたり踏みつけたりすると咬まれることがあるため注意が必要です。
ヒメハブ(Ovophis okinavensis)
イボイモリも姿を現しました。
この地域のイボイモリは、茶褐色の個体が多いことが特徴です。
また、シリケンイモリが多い水系ではイボイモリが少ない傾向があるのですが、ここではイボイモリとシリケンイモリが同じ石の下に隠れていることが多く、ほぼ同じ比率で見つかります。
2時間弱の調査で、多くのイボイモリを観察することができ、高密度で生息していることを確認することができました。
昼間の調査はこれで終了です。
一旦奥間に戻って、夜間調査の準備や軽く食事をすることにします。
イボイモリ(Echinotriton andersoni)
ササキハシリグモ(幼体)