その34 東南アジア珍奇植物の旅(西スマトラ編)-5
Ikimono Dayori sono34

東南アジア珍奇植物の旅(西スマトラ編) Page5

山道で出逢った荷物を運ぶ女性山道で出逢った荷物を運ぶ女性  車で到着した場所は、何の変哲もないヤシ林です。森林局のスタッフによると、ここから川沿いに山に入っていくと生育地があるとのこと。しかも行程はあまりきつくないし、小川を歩いて行くらしいので、半ズボンのままスタートします。
 最初は田んぼのあぜ道を歩いたり小川を遡ったりと散歩気分だったのですが、途中からは、かなり急な沢を藪こぎをしながら進みます。
左:山道で出逢った荷物を運ぶ女性
 
 むき出しの足があっという間に傷だらけになったことは言うまでもありません。おまけにヤマヒルまでくっついています。話が違うよー・・・発狂しそうになりながらも、延々藪こぎが続きます。途中、幹生果を沢山付けたイチジク属の植物Ficus sp)を見つけました。写真に写りたがり屋のスタッフが、俺も一緒に撮せとばかりに催促します。仕方なく記念撮影。
藪こぎをしながら沢を詰める様子
幹生果を付けるイチジク属の植物
藪こぎをしながら沢を詰める様子
幹生果を付けるイチジク属の植物

 沢を詰めきって斜面に取り付いた時です。50cm位の大きさの巨大竹の子の様な物体を見つけました。まだ小さいのですがハナショクダイオオコンニャクの花芽です。周辺を探すと、1.0m位のものや2.0mに達するものまで見付かりました。
 ハナショクダイオオコンニャクAmorphophallus titanum)は、サトイモ科コンニャク属の植物で、スマトラ特産の珍しい植物です。和名であるハナショクダイオオコンニャクの意味は、燭台(ろうそく立て)のような花を付ける大きなコンニャクということです。ただ、この植物の最大の特徴は、とにかく巨大な事です。花の大きさは2.0mにも達し、球根(こんにゃく玉)は60kg以上になります。葉や茎は日本のコンニャクとよく似ていますが、ひたすら巨大で5.0mにもなります。
 花芽や花ばかり見付かるので、どれが葉や茎なのかナーと思っていたのですが、たずねてビックリ!!自分が寄り掛かって休んでいた高木がそれとのこと。あまりの大きさに唖然とさせられたのでした。確かによく見ると日本のコンニャクをそのまま巨大にしたような形態です。
 この花もラフレシアと同様に腐敗臭を出し、動物の死骸を餌とするシデムシなどの昆虫を集め、彼らの力を借りて受精を行います。一度花を付けると20年位は花を付けないそうです。

ハナショクダイオオコンニャクの蕾 ハナショクダイオオコンニャクの花と筆者ハナショクダイオオコンニャクの花と筆者ハナショクダイオオコンニャクの花と筆者
ハナショクダイオオコンニャクの花と写りたがり屋のスタッフ
上:ハナショクダイオオコンニャクの蕾
下:花と写りたがり屋のスタッフ
ハナショクダイオオコンニャクの花と筆者
ハナショクダイオオコンニャクの蕾 2m位に成長した花 5mにも達するハナショクダイオオコンニャクの葉と茎
5mにも達するハナショクダイオオコンニャクの葉と茎
  1:ハナショクダイオオコンニャクの蕾
  2: 2m位に成長した花
  3・4: 5mにも達するハナショクダイオオコンニャクの葉と茎
 
カニクイザル  一通り写真撮影し、登ってきた沢を下ります。樹冠で餌を食べているカニクイザルを見つけましたがヒルが気になってレンズを交換する余裕がありません。河原で泥とヒルを落として一安心。車を停めたところに引き返したのでした。
 この様にしてブキティンギでの全ての観察を終了し、森林局のスタッフと記念撮影をしてブキティンギを後にしました。
カニクイザル

眼下に広がる美しい水田 観察を終えての団欒観察を終えての団欒
眼下に広がる美しい水田 眼下に広がる美しい水田
眼下に広がる美しい水田

 この西スマトラの旅は、海岸のウンチ責めから始まり、ドリアン、ラフレシア、ハナショクダイオオコンニャクと臭いものづくしの旅でしたが、それ以上に自然の豊かさと、自然に融和したブキティンギの町や農耕地の美しさ、人々の優しさを心に刻む旅になりました。
 水田を耕している水牛、原生林で我々を見下ろしていたテナガザルの姿と鳴き声、子供達の笑顔・・・ブキティンギからパダンに向かう途中に眼下に広がった美しい水田風景・・・・どれ1つとっても今でも忘れることがでない記憶です。

 今回の生きもの便り「東南アジア珍奇植物の旅(西スマトラ編)」はこれでおしまいです。

 
2003年2月23日 さくちゃんこと佐久間聡


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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