その29 春の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行−2
Ikimono Dayori sono29

春の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行 Page2

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 夜8時、夜間調査開始の時間です。
 今日の夜間調査の目的は、昼間ちらっと概査した渓流のポイントで、イシカワガエルを見付けて観察し、まず最初の関門をクリアーすることです。
 林道脇に車を停めて、夜間調査の身支度と撮影機材をセットして出発です。ライトで足下を照らしながら、ゆっくり渓流に下りていきます。少ないながらニホンカジカガエル(リュウキュウカジカガエル)やヒメアマガエルが足下から跳ねて草むらに逃げ込みます。渓流に入って最初に見付けたのがハナサキガエルです。背中が緑色タイプのハナサキガエルも見つけました。ヒメハブは沢山出てきているのに、カエルの個体数が極端に少ないのが気になります。肝心のイシカワガエルはおろか、いつも見かけるナミエガエルすら見つかりません。

ニホンカジカガエル
ハナサキガエル
水際でカエルを狙うヒメハブ

 折り返し地点で、今日はダメかもしれないナーと呟きながら上ってきた渓流を引き返します。イシカワガエルが隠れていそうな場所を集中的に探しながら下りますが、結局ホルストガエルの亜成体を見つけただけで、この沢でイシカワガエルを見つけることは出来ませんでした。
 車に戻って、期待薄なのですが林道を流してみることにします。
 道路は乾燥しているし、気温も低いためなにも見つかりません。6月に入るとクロイワトカゲモドキが沢山出てきているブロック積みの水抜き穴に、アカマタが沢山入っていたのには驚きました。1匹だけ引きずり出して写真撮影をしました。
 午前1時を回ったため、何時もナミエガエルが観察できる水場で引き返すことにします。

水抜き穴に潜むアカマタ
アカマタ

 車を停めて水場に近づきライトを照らします。いましたいました。ナミエガエルの成体です。3cm足らずの幼体も沢山います。抱接中のニホンカジカガエルも見付けました。一通り水場を探した後で、近くの斜面を探します。3m位の崖にライトを当てた瞬間のことです。まだら模様の巨大なカエルが目に飛び込んできました。今夜一番のターゲット、イシカワガエルの登場です。しかも最大級です。
ナミエガエル成体
抱接中のニホンカジカガエル
イシカワガエル成体
イシカワガエル成体

 「イシカワの成体みっけ!!」の言葉にみんなが駆け寄ります。真っ暗闇の林内に3つの光が揺れながら近づいてきます。
 図鑑やテレビでは味合うことのできない迫力に、3人共感激しているみたいです。みんなで思い思いに写真撮影し、今夜の観察はこれで終わることにしました。
 あきらめかけた時の大物登場で、一晩で山原固有種と沖縄本島に分布する県指定の天然記念物の全てのカエルを観察することができました。私的には、難しい関門の1つをクリヤーできたことに満足し、ホテルに向かったのでした。


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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