Ikimono Dayori sono64
横沢入 生物季節(両生・爬虫類編)
春
春の横沢入は、張り詰めた空気が緩み、生きもの達の息吹を最も感じる季節です。
雑木林が芽吹き、丘陵地が萌黄色に包まれます。
林床では、ひっそりとシュンランが開花し、アカネズミが食べ残したドングリが発芽しています。
谷戸田の畦道にはレンゲソウが咲き誇り、春の訪れを告げてくれます。
横沢入−春景色 |
このころになると、多くの利用者が横沢入を訪れるようになります。
浚渫された谷戸の休耕田ではトウキョウサンショウウオ(Hynobius tokyoensis)の産卵がピークを迎え、水中の小枝や落葉の裏に三日月形の卵嚢がたくさん産み付けられています。
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)やアズマヒキガエル(Bufo japonicus formosus)も繁殖のために集まってきます。
アズマヒキガエルは、体に似合わず「クゥクゥクゥ、グゥグゥグゥ」と小さな声で鳴き雌を誘います。
産卵が終わると5mにも及ぶ長いホース状卵塊が産み付けられています。
トウキョウサンショウウオ(成体) | トウキョウサンショウウオ卵嚢とアカハライモリ |
婚姻色の出たアカハライモリ♂ | アズマヒキガエル成体と卵塊 |
トウキョウサンショウウオやアズマヒキガエルの産卵がピークを過ぎると、開放感のある中央湿地に「キリリリリ、カララララ」とカエルの大合唱が響き渡ります。
シュレーゲルアオガエル(Rhacophorus schlegelii)の繁殖シーズンの始まりです。
土の中に産卵することが多いため、なかなか昼間に成体を見るチャンスは少ないのですが、田圃の畦に産み付けられた白い泡状の卵塊を目にすることができます。
アカガエルの幼生(オタマジャクシ)や産卵に訪れたカエルを捕食するために、ヤマカガシ(Rhabdophis tigrinus tigrinus)やアオダイショウ(Elaphe climacophora)なども谷戸に姿を表すようになります。
シュレーゲルアオガエル(成体)と卵塊 |
アオダイショウ | ヤマカガシとシュレーゲルアオガエル(成体)と卵嚢 |
谷戸田の田植えが終わり、新緑が谷戸を覆うころを見計らって姿を表すのはニホンアマガエル(Hyla japonica)とトウキョウダルマガエル(Rana porosa porosa)です。
トウキョウダルマガエルは、何処の生息地でも個体数が減少しているカエルで、横沢入でも多いカエルではありません。
休耕田の浚渫や昔ながらの稲作を続けることによって、徐々に個体数が増えてくれるだろうと思われるカエルです。
トウキョウサンショウウオの孵化も終わり、幼生が抜け出した卵嚢が目立ちます。
アカガエルやアズマヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)も随分大きくなってきました。
水際の樹木から「コロコロ、コココ・・・ココ・・・」と聞き覚えのある鳴き声が聞こえるようになると初夏の訪れです。
トウキョウダルマガエルとニホンアマガエル(成体) | 幼生が孵化した後の卵嚢 |
ヤマアカガエル(幼生) | アズマヒキガエル(幼生) |