Ikimono Dayori sono64
横沢入 生物季節(両生・爬虫類編)
横沢入(東京都あきる野市横沢入)は、武蔵野段丘の最奥部に位置し、五日市丘陵とそれに囲まれた盆地とからなる地域で、2006年1月に東京都で第一号の「里山保全地域」に指定されました。
里山を構成する谷戸部は、宮田ノ入、草堂ノ入、荒田ノ入り、釜ノ沢などの七つの谷戸から構成されています。
谷戸頭から湧出した水は、細流を形成し谷戸田を潤し、中央湿地で一つの流れ(横沢川)となり秋川に注いでいます。
丘陵部は谷戸部を取り囲むような馬蹄形の形状で、古くから植林が行われ、スギ・ヒノキ植林とコナラ林が優占しています。
里山保全地域指定後は、多くの市民団体が活動の場とするとともに、維持・育成管理・運営管理に関わっています。
「西多摩自然フォーラム」は横沢入が里山保全地域に指定される以前から、横沢入の保全活動や里山保全地域の指定ならびに維持・育成管理・運営管理等に深く関わっている市民団体の一つです。
私も「西多摩自然フォーラム」の生物部会の一員として(新参者ですが)、生きもの好きな仲間達と一緒に、横沢入で楽しみながら毎月1回の定例調査を行っています。
東京の里山 横沢入通信ホームページ http://green.ap.teacup.com/yokosawa/
西多摩自然フォーラムホームページ http://ntforum.org/index.html
2009年最初の生きも便りは、ブログ「東京の里山 横沢入通信」の開設を記念して、「西多摩自然フォーラム」生物部会の定例調査の一環で撮影した写真を基に、両生・爬虫類から見た横沢入の生物季節を紹介することにしましょう。
冬の横沢入は、稲刈りの終わった谷戸田に薄氷が張り、抜けるような青空を背景に谷戸を取り囲む雑木林が銀色に輝いています。
北風にヨシがガサガサと音を立ててなびき、ガマの種子が巻き上げられ、風の道を教えてくれます。
高茎草本に産み付けられたオオカマキリの卵鞘や小枝に付いているイラガの繭が目立つのもこの季節です。
横沢入を訪れる人も少なく、四季を通じて最も静かな季節です。
横沢入−冬景色 |
年が変わり正月気分も冷めやらぬ1月中旬、市民団体の手によって浚渫された谷戸の休耕田や復田した谷戸田がにわかに騒がしくなります。
アカガエルの繁殖シーズンの到来です。
横沢入には、ニホンアカガエル(Rana japonica)とヤマアカガエル(Rana ornativentris)が生息しているのですが、産卵はニホンアカガエルから始まり、ヤマアカガエルへと移って行きます。
耳を澄ますと、水の溜まった谷戸田や休耕田から「キョ・キョ・キョ・・・」「キャララ・キャララ・・・」と、鳥の囀るような鳴き声が聞こえてきます。
水面に複数の波紋が広がり、遠くからでも多くの個体が集まっていることが分かります。
こんなに多くのアカガエルが生息していたのかと驚くほどです。
多くの雄が水場から陸に向かって鳴き続け、産卵のために水場にやってくる雌を待ち受けています。
1匹の雌に多くの雄が抱接し団子状になっています。溺死した雌に抱接する慌てんぼうの雄もたくさんいます。
天候に左右されますが、両種とも1月中旬から繁殖が始まり3月まで続きます。
繁殖が終わると、谷戸田や休耕田の水面を覆いつくすほどの卵塊が産み付けられているのです。
2月に入ると、アカハライモリも水場に姿を表すようになります。
トウキョウサンショウウオの産卵も始まり、早春の訪れを伝えてくれます。
ニホンアカガエル(成体) | ヤマアカガエル(成体) |
抱接中のヤマアカガエル | 溺死した雌に抱接するヤマアカガエル |
卵塊の上で雌を待つ雄 | ニホンアカガエル・ヤマアカガエルの卵塊 |