その37 晩夏の沖縄(本島と渡嘉敷島)生きもの紀行−4
Ikimono Dayori sono37

晩夏の沖縄(本島と渡嘉敷島)生きもの紀行 Page4

 島の最北部から、林道沿いに可能性の高そうな場所を見つけては、車を停めて石や倒木をはぐっていきます。林床にはやたらとヘリグロヒメトカゲが這い回っていますが、お目当てのイボイモリは一向に出てきてくれないまま渡嘉敷集落まで戻ってきてしまいました。
  オキナワキノボリトカゲ
 今度は、徐々に南下して、宿泊予定のホテルがある阿波連集落までを調べます。汗でどろどろになりながら、石や倒木をはぐっていきます。茅やススキが刈り取られて堆積しているところは、それらも徹底的にはぐっていきますが、やっぱり出てくるのはヘリグロヒメトカゲとシリケンイモリだけです。木の上ではキノボリトカゲがこちらをうかがっています。
 

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ヘリグロヒメトカゲ リュウキュウヤマガメ
   
ヘリグロヒメトカゲ
リュウキュウヤマガメ
オキナワキノボリトカゲ

 とうとう、イボイモリを1匹も見つけられないまま阿波連集落に到着してしまいました。
 唯一の収穫と言えば、リュウキュウヤマガメと作家灰谷健次郎氏の家を発見したぐらいです。リュウキュウヤマガメは沖縄島、久米島、渡嘉敷島の3島だけに生息する固有種で国指定の天然記念物です。
 灰谷健次郎は、もちろん両生・爬虫類ではありませんが「兎の眼」などの著作で有名な作家で、その家は、綺麗なトカシクビーチを見下ろせる高台に一軒だけ建っていて、周囲はハイビスカスの生垣に囲まれた、素敵な佇まいの家でした。
綺麗なトカシクビーチ
綺麗なトカシクビーチ

 ホテルにチェックインし、シャワーを浴びて小休止の後に、夕食と夜間調査のために北上します。途中の道でも生きものを探しながらの移動ですが、カラカラに乾いた道路には何も出てきていません。

ミナミヤモリ  7時45分に渡嘉敷集落に到着。食堂を探して入りますが、食事は7時30分でラストオーダーとのこと。どの店に入っても食堂は飲み屋に変身していて、食事はできないとのこと。夜間調査をしないのなら、そのまま飲んだくれるのだけど、今夜はマダラトカゲモドキの観察が控えています。ぐっと我慢して、何も食べないまま夜間調査に突入です。

 まずは、北部の林道を妻と歩きます。
 2つのライトだけが真っ暗闇の林道を照らします。
 アスファルト舗装された林道には少ないながらミナミヤモリが這っています。本島産と比べると随分小さいので、持ち帰って調べてみることにします。次に見つけたのは巨大なナナフシ。妻の足下に止まらせて写真撮影です。
 林道は途中から未舗装になり草が生えてなかなか良い雰囲気ですが、雨が降っていないため乾燥しています。
ハブに注意しながらゆっくりと進みます。
妻の靴にくっついた巨大ナナフシ
上:ミナミヤモリ
下:妻の靴にくっついた巨大ナナフシ

 お馴染みのヒメハブやアカマタ以外何にも見付からないまま一時間ぐらい歩いた頃でしょうか。足下から小さな生きものが走り去ったように見えました。ライトを当てて辺りを慎重に探します。いました!!マダラトカゲモドキです。尻尾を立ててふりふりとお得意のポーズをとっています。
 妻を呼び寄せて写真撮影です。草の中に入っているため上手く撮影できませんでしたが、オレンジのバンドがとれも綺麗な亜成体でした。
 林道では結局これ1匹のみ。仕方ないので、沢をつめることにします。渡嘉敷の沢は急峻でハブも多いため注意が必要です。

マダラトカゲモドキが生息する沢マダラトカゲモドキが生息する沢
マダラトカゲモドキが生息する沢
マダラトカゲモドキ 亜成体 マダラトカゲモドキ 亜成体
   
 急峻な沢を登るためには、手を付いて岩を登ったり倒木を越えたりしなければなりません。この様な場所では、岩や倒木を越えた先や手を付く場所にハブがいないかをきちっと視認して進む必要があります。ハブ対策としては不用意にハブの攻撃範囲に入り込まないことが重要です。手にはゴムでコーティングしてある軍手、足下はスパイク付きの長靴です。沖縄の急峻な沢歩きで、滑らずに岩を上り下りするにはスパイク付きの長靴が便利です。妻を林道に残して1人で入っていきます。


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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