その32 冬の奄美大島、生きもの紀行-3
Ikimono Dayori sono32

冬の奄美大島、生きもの紀行 Page3

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 尾根道をかなり進んだ当たりで、先を行くしろちゃん・森ちゃんの車のテールライト光っています。車に近づくと、イタジイ林にライトを当てているようです。その先をよーく見るといました。リュウキュウコノハズクです。何時もホホー・ホホーと鳴いて夜間観察を楽しませてくれる鳥です。
リュウキュウコノハズク
 次に姿を現したのはアマミヤマシギです。真っ暗な林道で突然ライトに照らし出された姿は幻想的ですらあります。前回は撮影したフィルムを無くしてしまったため、是非紹介したい鳥のひとつでした。土砂降りの雨の中よく出てきてくれたものです。
 さて、今夜の観察はこれでおしまいです。
 ホテルに戻って、今日出会った生きもの達の話で盛り上がりながら、酒が進んだのは言うまでもありません。
リュウキュウヤマシギ
 21日 実質的に今日一日が最後の調査日です。朝から気合いが入っています。
 天候は曇り、でも朝食を済ませ9時30分にホテルを出発する頃には、ポツポツと大粒の雨が降り始めてしまいました。今日も一日雨模様です。
 今日は名瀬側から中央林道に入り、イボイモリの生息の可能性がありそうな場所を徹底的に調べる予定です。10時過ぎから調査開始。車をこまめに止めて、片っ端から石や倒木をひっくり返して行きます。
 毎度の事ながら私はユンボ・私はユンボ・私は工業機械・私は工業機械と呟きながら。しかし、1匹も見つけられないまま時間だけがいたずらに過ぎていきます。12時近くになった頃でしょうか。去年見つけた場所によく似た環境が現れました。否応なしに手鍬を持つ手にも力が入ります。周辺部から徹底的に落ち葉や倒木をはぐっていきます。時にははぐった下を掘り返しもします。知らない人が見たら、畑を耕しているように見えるだろうナーと思いながら・・・。
 さて、周辺部から捜し始めて10分ぐらい過ぎた頃です。落ち葉をはぐった瞬間です。ジャン、ジャ、ジャーン。いました。奄美産のイボイモリの発見です。
 大きくてりっぱな成体です。しかもアゴの当たりに赤斑が出ていて綺麗です。写真撮影しプラケにストックします。坊主にならなくてほっと一息です。

大きな落ち葉の下に潜んでいた
イボイモリ
顎に明褐色斑が出た美形個体
美形個体のアップ

 丁度しろちゃん達の車が上ってきたので、イボイモリを見せて採集場所の様子を説明します。みんな納得した様子で蜘蛛の子を散らすように各々調査を再開します。
 結局、同じ様な環境で4匹のイボイモリを見つけることができました。
 奄美大島産のイボイモリは、形態的には徳之島の個体群とよく似ていますが、大きさは、沖縄島や瀬底島の個体群よりは小さいのですが、徳之島の個体群よりは大きく、ちょうど沖縄島・瀬底島と徳之島の中間的な大きさです。
 生息密度はいままで調査した島の中では一番低い印象を持ちましたが、それは奄美大島産イボイモリの生息環境を把握しきれていないためかもしれません。
 時計を見ると2時を回っています。一度山を降りて住用村に向かうことにしました。住用村では遅い昼食を済ませ、住用村側から三太郎峠をへて中央林道に至るルートの下見に出かけます。ここは、去年アマミノクロウサギを始め奄美固有の生きものを多く観察したポイントで、しろちゃんやもりちゃんにもクロウサギを見せてあげたいからです。車をゆっくり走らせながらウサギの糞を捜します。激しい雨がふっているため、糞を捜すのも一苦労です。それでもいくつかの場所で可愛らしい糞を見付けることが出来ました。


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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