Ikimono Dayori sono61
真夏の沖縄本島家族旅行 Page2
国道58号を北上し奥間に向かって車を走らせます。
名護を過ぎると国道58号は海岸線にそって走り、東シナ海を左に望みながらの快適なドライブとなります。
移り変わる海の景色に感激し、時々休憩スポットで写真撮影しながら、のんびり進みます。
一人旅だと、生きものの観察に専念するために、ゆっくり海を眺める余裕もないのですが、景色を眺めながらのんびりできるのも家族旅行ならではのことです。
移り変わる海の景色とそれを眺める妻と娘 |
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飲み物やお土産を買うために、大宜味村の道の駅に立ち寄りです。
この道の駅にはいつも立ち寄って、山中で食べるバナナや飲み物、お土産用の手作り佃煮などを購入しています。
飲み物やお土産の購入は妻に任せて駐車場の花壇を見て回ると、見慣れないシジミチョウがたくさん飛んでいます。
5月に訪れた徳之島でも観察することができたクロマダラソテツシジミです。
徳之島では、採集しなかったので少しだけ採集しておくことにします。
クロマダラソテツシジミはフィリピンや台湾など東南アジアに分布するシジミチョウの仲間で、食樹はソテツです。
日本には迷蝶として飛来し、1992年10月〜1993年3月にかけて沖縄本島で、また2001年9月〜12月に与那国島で発生が確認されていた蝶です。
2006年〜2007年にかけて石垣島を初めとする南西諸島や九州南部、兵庫県東部や大阪府北部などで発生が確認され、国内での分布拡大が見られたことから2008年の動向が気になっていたのですが、沖縄本島では2007年以上の大発生のようです。
クロマダラソテツシジミ(Chilades pandava) |
プライベートビーチを染める夕日 |
ここから宿泊先のJALプライベートリゾートオクマまでは、20分程度です。
ホテルに到着後、着替えを持って海が眺望できる大浴場へ向かいます。
大浴場やプールサイドに植栽してあるソテツでもクロマダラソテツシジミがたくさん発生していました。これは明日、写真撮影することにしましょう。
大浴場で汗を流し窓の外を眺めると、綺麗な夕日が目に飛び込んできました。
日没までの一時は、ビーチに出て、潮騒を聞きながら夕日を眺めて過ごしました。
夕食を済ませて、時計を見ると8時を回っています。
ここからは、一人寂しく(実は楽しく)夜間観察の時間です。
観察用具をザックに詰めて「ちょっと山に入ってくるねー」と部屋を出ようとすると、「ちょっと待ってよ・・・私達も行くよ!」と娘の声が・・・。
今回の旅行には、妻や子供達の長靴を持ってきていないので足元が不安ですが、林道を車で流しながらの観察だったら大丈夫かなー。
妻がハンドルを握り、さくちゃんが助手席、後のシートは子供達がそれぞれに懐中電灯を持って乗り込みます。
久しぶりに家族4人で、夜のヤンバルに出発です。
妻の運転は慣れたもので、林道に入ると車を蛇行させながらゆっくり走らせます。
路面や林縁は、カラッカラに乾燥しているため、観察条件は悪いのですが、さくちゃんと妻は車のヘッドライトで路面に出てきている生きものたちを、子供達は懐中電灯で路傍や林縁の生きものたちを捜します。
最初に見つけたのは、巨大なホルストガエルです。
子供達がゆっくり近づいて観察しているうちに、さくちゃんはカメラのセットします。
ホルストガエル(Rana holsti) |
何回かシャッターを切った後で、ホルストガエルの特徴を解説します。
「ホルストガエルは、沖縄島北部と渡嘉敷島だけに分布しているカエルで、沖縄県の天然記念物に指定されているんだよ・・・」
「両生類の指は前脚が4本、後脚は5本なのだけど、ホルストガエル前脚の指は5本あるように見えるでしょ。でも1本は指ではなくて棘状の突起なんだよ・・・」
指先を指しながら、解説していると、ホルスト君は、大きくジャンプして林縁に姿を消しました。
次に見つけたのはハナサキガエルです。
あやちゃん(長女)が林縁に潜む個体を見つめました。あやちゃんは小さいころから生きものを見つけるのが上手で、この夜もその才能を十分発揮してくれました。
ハナサキガエル(Rana narina) |
写真撮影は、たーち(長男)に任せることにして、さくちゃんはインタープリターに徹します。
「ハナサキガエルは、ヤンバルでは比較的多く観察することができるカエルなんだけど、沖縄島北部の固有種なんだよ」
「体色や斑紋等の個体変異が大きいカエルで、この個体は茶褐色だけど緑色の個体もいるんだよ・・・」
「ジャンプ力がすごいから驚かしてごらん!」
カエルは、期待にこたえて一度のジャンプで優々と林の中に飛び込みました。
その後も、ハナサキガエルやリュウキュウカジカガエルを観察しながら、林道と渓流が併走しているところまでやってきました。
全員が車から降り、全てのライトを消して渓流の方向を眺めます。
雲間から輝くたくさんの星。
渓流や林間を飛び交うクロイワボタルの光。
絶え間なく聞こえる水音とリュウキュウコノハズクの優しく物悲しい鳴き声。
この空間を家族で共有できるだけで、沖縄にきてよかったなーと思うさくちゃんなのでした。
ここからは、車を置いて林道を歩いてみることにしましょう。
お目当てはクロイワトカゲモドキ。
この場所は、クロイワトカゲモドキが多産し、以前から多くの個体を観察している場所です。
見つけるのは長女のあやちゃんに、写真撮影は長男のターチにお任せして、さくちゃんはあとからチンタラ・ポンタラと付いていきます。 歩き始めてすぐに、あやちゃんが石積み張り付いているクロイワトカゲモドキを発見。 「パパー・・・トカゲモドキいたよ!」 「どれどれ・・・ほんとだ〜」 さすがあやちゃん! いそうな場所をよくご存知で・・・あっという間に見つけてしまいました。 |
トカゲモドキを捜すあやちゃんとさくちゃん クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae) |
あやちゃんとターチは、幼いころから一緒に生きもの観察を行っているため、生きものを見つけることがすごく上手です。
木の陰や草の中に潜む個体まで、離れた場所から簡単に見つけてしまうのですから、さくちゃんも顔負けです。この日も二人で20匹近くのクロイワトカゲモドキを見つけてくれました。
時計を見ると、1時を回っています。
雨も降り出したので、ゆっくり林道を引き返しながら観察し、ホテルに向かいました。
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