その59 春の徳之島 生きもの観察紀行−4

Ikimono Dayori sono59

春の徳之島 生きもの観察紀行 Page4


いったんホテルに帰って、着替えと食事を済ませ、再び北部に向けて出発です。

まずは、林道をゆっくり走りながらヘビ類の観察です。

林道を巨大なアカマタDinodon semicarinatum )がゆっくり横切って行くのが見えます。

車を停めて、歩いてみる事にします。

時々、アマミノクロウサギがススキやヤマモモの実を食べに出てきているのですが、カメラをセットする前に逃げてしまいます。

大きな水溜りで、ガラスヒバァAmphiesma pryeri)が泳いでいます。カエルを狙って出てきているようです。


アカマタ  
アカマタ(Dinodon semicarinatum  
  ガラスヒバァ
ガラスヒバァ(Amphiesma pryeri

アカマタは、奄美諸島・沖縄諸島の大半の島々に分布する日本固有種で、徳之島でも多く見ることができるヘビです。幅広い食性の持ち主ですが、特にトカゲ・ヤモリ類やヘビ類を好む傾向があります。

ガラスヒバァも、奄美諸島・沖縄諸島の大半の島々に分布する日本固有種で、田圃や湿地、沢などの湿潤地に多く生息し、主にカエルやオタマジャクシを好んで捕食する傾向があります。

巨大なヒメハブOvophis okinavensis )が、水溜りのそばを這っています。

ヒメハブは、奄美諸島と沖縄諸島(隆起珊瑚起源の島を除く)に分布するヤマハブ属の毒蛇で、湿潤な渓流周辺や水田近くで見かけます。夜行性で、待ち伏せしてカエルを中心に捕食します。

綺麗なリュウキュウアオヘビCyclophiops semicarinatus )も多く姿を現してくれました。

リュウキュウアオヘビは、トカラ列島の宝島・小宝島と奄美諸島・沖縄諸島に広く分布するエレガントでおとなしいヘビで、主にミミズを食べています。

奄美諸島に分布するリュウキュウアオヘビは、体色が褐色の個体や黒班を有する個体が多く、あまり緑色には見えません。


ヒメハブ
ヒメハブ
ヒメハブ( Ovophis okinavensis
リュウキュウアオヘビ
リュウキュウアオヘビ
リュウキュウアオヘビ( Cyclophiops semicarinatus

コブラ科の綺麗なハイ(Sinomicrurus japonicus boettgeri)を観察したかったのですが、見つけられないまま別の場所に移動し、沢をつめることにしましょう。

移動中の道路で、アマミノクロウサギやアマミヤマシギを見かけますが、カメラをセットする前に逃げてしまい撮影できません。

特にアマミヤマシギは、奄美大島や沖縄島ではおっとりとしていて、近寄っての写真撮影は比較的容易なのですが、何故か徳之島の個体は近寄るとすぐに逃げてしまいます。

何も撮影できないまま、目的の沢に到着しました。

相変わらず、多くのリュウキュウカジカガエルが足音やライトの光に驚いて飛び跳ねます。その中でひときわ小さいカエルはヒメアマガエルMicrohyla okinavensis)のようです。

ヒメアマガエルは、喜界島、奄美大島以南の南西諸島の低地から山地まで広く分布し、林床や渓流脇の落ち葉の間、農地や草地等に生息しています。

日本最小のカエルで、主にアリなどの小動物を捕食しています。

小さい割にジャンプ力が優れているため、多く生息しているにも関わらず見つけにくいカエルです。オタマジャクシは、胴体が透き通っていて簡単に本種のものと確認できます。


ヒメアマガエル
ヒメアマガエル
ヒメアマガエル(Microhyla okinavensis

少ないながらリュウキュウアカガエルRana okinavana)も姿を表しました。

リュウキュウアカガエルは、奄美大島、徳之島、沖縄島、久米島に分布し、平地から山地までの森林や水辺に生息し、以前は比較的普通に観察することができたのですが、近年は、生息個体数が極端に減少しています。


そろそろ引き返そうとした時です。

石の上に鎮座する巨大で綺麗なアマミハナサキガエルを見つけました。
リュウキュウアカガエル
リュウキュウアカガエル(Rana okinavana
アマミハナサキガエル
アマミハナサキガエル
アマミハナサキガエル(Rana amamiensis

まるでイシカワガエルかと思えるほどの大きさと美しさです。

今回の徳之島では、幼体や亜成体だけしか観察できていなかったので、立派な成体を観察できてほっと一息です。

オビトカゲモドキも、幼体〜成体までの個体が姿を表してくれました。

自切した尻尾が、再生途中の幼体と頭部に脱皮した皮膚が付着している成体の写真を載せておくことにしましょう。


オビトカゲモドキ
オビトカゲモドキ
オビトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae splendens

5月18日

最終日です。

夜間調査用具を整理し、のんびりとチェックアウトを済ませて10時過ぎにホテルをスタートです。

今日は、観光スポットを訪ねながら島内を一周し、所々で昆虫採集の予定です。


ヤギ

車の窓を全開にして、ゆっくり車を走らせます。

相変わらず、アカショウビンが「キョロロロロロロ」と澄んだ声で鳴いています。

以前妻と訪れた、犬田布岬やムシロ瀬、ソテツトンネル等で車を停めて、クロマダラソテツシジミなどを観察しました。

さて、そろそろ時間です。車中に散在している調査用具を片付けて空港に向かいました。

 

6月7日 さくちゃんこと佐久間聡


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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし) お便りの宛先はdelias@ss.iij4u.or.jpです。