その57 冬の沖縄本島生きもの観察紀行−2
Ikimono Dayori sono59
春の徳之島 生きもの観察紀行 Page2

 ホテルでチェックインと夕食を済ませや午後7時から夜間調査のスタートです。
 まずは、三京分校から登山道を進み井之川岳での観察です。登山道を少し入ったところで車を停めて、懐中電灯をたよりに登山道や枝沢を歩きます。
 小さなカエルが懐中電灯の明かりに驚いて飛び跳ねます。その多くは普通種のリュウキュウカジカガエルなので撮影意欲に欠けるのですが、徳之島の生きもの達は、デジタルカメラで撮影していなかったので、ここはまめに撮影しながら進みます。

リュウキュウカジカガエル雄 リュウキュウカジカガエル雄
リュウキュウカジカガエル雌 リュウキュウカジカガエル雌
リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica ) 上:♂ 下:♀

 リュウキュウカジカガエルに混ざって、時折大きなジャンプを決めているのはアマミハナサキガエルRana amamiensis )の幼体です。

アマミハナサキガエル 幼体  アマミハナサキガエルは、奄美群島の奄美大島・徳之島特産種で、自然林や回復の進んだ二次林内を流れる渓流の上流域やその周辺に生息しています。
 奄美大島では比較的普通に観察することができるのですが、徳之島は開発が進んでいるため生息は局地的です。
 沖縄北部に生息するハナサキガエルに非常に近い種ですが、より大型で遺伝的にも異なるため、1994年にハナサキガエルから分離し,新種として記載されました。
アマミハナサキガエル 幼体

 カエルの写真を撮りながら沢を登っていきます。しかし、お目当てのオビトカゲモドキは、なかなか姿を表してくれません。
 それどころか、掌サイズの巨大なオオハシリグモアマミサソリモドキ、これまた最大級のトビズムカデ等々、さくちゃんの苦手なゲテモノたちのフル出場です。

オオハシリグモ アマミサソリモドキ
オオハシリグモ アマミサソリモドキ
トビズムカデ
トビズムカデ

 登山道に戻って別の沢をつめることにしましょう。
 落葉が堆積している登山道を登っていると、道端でガサガサと生きものが動く音が聞こえます。

オビトカゲモドキ成体  慌ててライトを当てると、オビトカゲモドキGoniurosaurus kuroiwae splendens )の成体です。
 やっと姿を表してくれました。
 オビトカゲモドキは、日本に分布するクロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae )の5亜種のうちの一種です。
 他の4亜種(クロイワトカゲモドキ、マダラトカゲモドキ、イヘヤトカゲモドキ、クメトカゲモドキ)が沖縄県の沖縄島やその周辺の島々に分布しているのに対し、本種のみ鹿児島県の徳之島に分布しています。
生きもの便り 2007年イボイモリ観察紀行参照
オビトカゲモドキ成体

 オビトカゲモドキは、他の亜種と比べて小型で、斑紋等の個体変異が少なく、胴体に3本、頸部に1本の淡紅色の横帯があります。
 再生尾の尻尾をフリフリして、ステキなポーズを決めてくれます。
 多くの写真を撮影して別の沢をつめることにしましょう。
 大小の岩石が積み重なる沢を一歩一歩注意深くゆっくり進んでいきます。
 ライトの光とそれにより強調される暗闇。
 ハブへの恐怖や見たことのない動物達やその生態を垣間見たい好奇心。色々な思いが錯綜します。
 時には立ち止まり、神経を研ぎ澄まして生きものの気配を探ります。
 近くの樹上でリュウキュウコノハズクがホッホー・ホッホーと鳴いています。
 トガリネズミでしょうか?ライトに照らされて、ネズミが慌てて逃げていきます。
 赤土が露出した崖に、オビトカゲモドキの幼体が張り付いています。去年生まれた幼体のようですが、完全尾でとても綺麗です。
 ゆっくり近づいて、写真撮影を行ないます。
 この沢では複数の幼体を観察し、写真撮影することができました。

オビトカゲモドキ幼体 オビトカゲモドキ幼体
オビトカゲモドキ幼体

 時計を見ると12時を少し過ぎています。
 時間はまだ早いのですが、犬田布岳を概査して今日の観察を終えることにします。

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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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