その43 晩秋の沖縄本島イボイモリ観察紀行−4
Ikimono Dayori sono43

晩秋の沖縄本島イボイモリ観察紀行 Page4

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 3日目。今日が最終日。
 瀬底島、中部、南部と転戦して、夜8時過ぎの那覇発羽田行きに乗り込む予定です。
 7時にホテルをチェックアウトし、まずは瀬底島に向かいます。
 瀬底島のイボイモリは1990年頃までは多産していましたが、近年においては生息数は多くありません。
 原因は定かではありませんが、過去の個体数調査などに用いたものと思われる、繁殖池への侵入防止柵やバケツを用いた落とし穴型トラップの放置によって(いまだに放置されている)、表流水が池に入らなくなり水質が悪化したことと、成体が池に侵入できなくなり繁殖できないことが主な原因のように思います。
 天然記念物に指定しておきながら、こんなずさんなことをしていることに腹立たしさを隠し得ません。
瀬底島にある3つのイボイモリの繁殖池
瀬底島にある3つのイボイモリの繁殖池
瀬底島にある3つのイボイモリの繁殖池(侵入防止柵が見える) 瀬底島にある3つのイボイモリの繁殖池(侵入防止柵が見える)
瀬底島にある3つのイボイモリの繁殖池(侵入防止柵が見える)

 2時間ほど探して、やっと1匹確認することが出来ました。
 瀬底島産のイボイモリを観察するのは、これで2回目です。
 今回確認した個体は、大変大きな立派な雌なのですが、左前脚の指が全てありません。
 どうも1989年に行われた調査時に、指切りマーキングされた個体のようです。
 指切りされてから15年。指切りされたときには、性成熟し、産卵のために訪れた個体だと思われることから、約20歳になるおばあちゃん個体です。
 指がないと言うハンデを背負って、よく長生きしてくれているものです。
 一通り写真撮影を行った後で、最後に指切りの状態を撮すために、いけないこととは知りながら手に持って撮影しました。
 
指切りマークが行われた個体
指切りマークが行われた個体

中部産イボイモリの生息環境  瀬底島で長居をしてしまったため、急いで中部の産地に向けて出発です。
 腰の状態は最悪です。車に乗り込むにも激痛が走ります。
 本島中部に生息するイボイモリは、開発などの影響で生息環境が分断・縮小・孤立化などにより悪化し、生息数が極めて少なく絶滅の危険性が高い個体群です。
 まずは、去年見付けたポイントでの観察です。
藪こぎしながら斜面を下って、沢を歩きます。
中部産イボイモリの生息環境

 住宅地が近いため、粗大ゴミが投げ捨ててあり、観察環境としては気持ちよくありませんが、イボイモリにとって粗大ゴミの下は絶好のすみかです。
 手鍬を使って、去年見付けた古タイヤをひっくり返します。いましたいました。最初にひっくり返したタイヤの下で、一発命中です。カメラをザックにしまっていたので、慌ててセットし写真撮影です。でも、この暗さだからなー。ストロボが壊れちゃったから手ブレするだろうなー・・・ブツブツブツ
イボイモリが隠れていた古タイヤ
イボイモリが隠れていた古タイヤ

 去年見付けた個体も小さかったけど、この個体も随分小さい個体です。
 ウムム待てよ!!去年は北部や瀬底島の個体群と形態的に大きな違いは見いだせなかったので、1匹見付けて写真撮影したら探すのやめちゃったけど・・・ひょっとすると小型の個体群なのかもしれないなー。
 俄然ファイトがわいてきました。この様な時って、なぜか腰の痛さを感じないんだよねー。
 ドッ・ドッ・ドッピュー・・アドレナリン噴出!!完全アホ化状態、おじさんパワー全開です。
 大きな石や粗大ゴミなどを次から次へとひっくり返し、倒木を蹴散らし、古タイヤを転がして、あっという間に6匹の個体を確認しました。
 やっぱりね。全ての個体が北部の個体群より全長でおよそ2・3cmも小さい個体でした。
中部産イボイモリ成体 中部産イボイモリ幼体
中部産イボイモリ成体
中部産イボイモリ幼体
 ウウーン。大満足。    


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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