その30 春の渓流性サンショウウオ(ハコネサンショウウオ・ブチサンショウウオ・ヒダサンショウウオ)観察日記−2
Ikimono Dayori sono30

春の渓流性サンショウウオ観察日記 Page2
(ハコネサンショウウオ・ブチサンショウウオ・ヒダサンショウウオ)

 ハコネサンショウウオの幼生が採集できたので、ブチサンショウウオとヒダサンショウウオを狙って、沢巾が狭く水量の少ない支流に入ってみることにしました。
 この沢は、私が今までに経験したヒダサンショウウオの生息環境より流速は緩やかで、生息の可能性は低いのですがとりあえず石をはぐってみることにします。
ブチサンショウウオが生息する沢

 一抱え以上もある石を下流から上流に向かってひっくり返していき、10m位進んだときです。大きな石をひっくり返した瞬間に何かが動いた気配がしました。水が澄むのを待って、覗き込むと・・・いました。生きもの便り初登場のブチサンショウウオの成体です。しかも2匹。さっそく捕まえて写真撮影です。銀白色に覆われた綺麗な個体です。今までの経験では近くに複数の個体が集まっていることが多いため、引き続き隣の石を慎重にはぐります。やっぱりいました。今度は模様の少ない個体です。結局この沢で5匹の成体を観察することができました。

ブチサンショウウオの成体
顔のアップ

 ブチサンショウウオは、本州の近畿以西、四国、九州に分布して、西日本を代表する流水性のサンショウウオです。地域変異や個体変異が大きく、将来研究が進むと、いくつかの種に別れる可能性を秘めたとても興味深いサンショウウオです。

 ブチサンショウウオの成体も観察できたし、腰も相当痛くなってきたため、そろそろやめようかと思っていたときです。川岸の大きな石をはぐった瞬間、何かが素早く別の石の下に隠れたのが見えました。水中ではないためトカゲかと思ったのですが、念のためにその石をひっくり返してみると、そこから出てきたのはハコネサンショウウオの成体でした。こうなったら同じ様な川岸の石を徹底的にはぐっていきます。いました。2匹目の成体です。どちらも模様の綺麗な典型的な西日本タイプの個体です。幼生は無愛想な顔をしていますが、成体は目が飛び出ていて、可愛い顔をしています。

ハコネサンショウウオの成体
顔のアップ

 サンショウウオ以外ではニホンヒキガエルと多くのタゴガエルを観察することができました。
 もっと捜したかったのですが、バスの時間も近づいてきたので下山することにしました。日本一美しいと言われる西中国山地のヒダサンショウウオには出会えませんでしたが、楽しい一時を過ごすことができた一日でした。
ニホンヒキガエル


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
お便りの宛先は、delias@ss.iij4u.or.jp です