その30 春の渓流性サンショウウオ(ハコネサンショウウオ・ブチサンショウウオ・ヒダサンショウウオ)観察日記−1
Ikimono Dayori sono30

春の渓流性サンショウウオ観察日記 Page1
(ハコネサンショウウオ・ブチサンショウウオ・ヒダサンショウウオ)

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 ワールドカップが開幕し、盛り上がりを見せる中、この生きもの便りを掲載する頃には、日本の決勝トーナメント進出が決まっていることと思います。
 情けないことに佐久間家は、決勝戦が行われる横浜に住んでいながら、色々と手を尽くしたにも関わらず、一枚のチケットも入手できませんでした。
 今回の生きもの便りは、4月下旬から5月上旬に掛けて渓流で観察したサンショウウオの話しをしましょう。
 
4月27日 ハコネサンショウウオ・ブチサンショウウオの観察日記
 4月26日に広島市内で仕事上の打ち合わせを終えて、宮島にある実家に帰郷しました。そこで、翌27日に広島県の北西部に位置し、西中国山地のランドマーク的存在の冠山に渓流性サンショウウオの観察に行ってきました。
 冠山がある吉和村は、ミドリシジミ類の有名な産地で、中学生から高校生の頃に何度も通い詰めたところなのですが、サンショウウオの観察に訪れるのはこれが初めてです。懐かしさと、期待に胸を膨らませて27日を迎えました。
 実家のある宮島を朝の6時半に出発し、船と路面電車、路線バスを乗り継いで、9時過ぎに冠山の登山口にあたる潮原温泉に到着しました。
 途中の車窓からの眺めは、リゾート施設やゴルフ場等が建設されて昔とは随分変わってしまいましたが、ミドリシジミ類の越冬卵を採集するために雪道を毎年何度も通ったことや、春の幼虫採集、夏の成虫採集等の楽しかった様々な思い出がよみがえってきました。

 登山口で飲み物を買って、ゆっくりとスタートです。水が引かれたばかりの水田にはシュレーゲルアオガエルが沢山鳴いています。気持ちのいい水田脇の道を進み、渓流に沿った登山道を登り始めると所々に野生のワサビが群生し、春植物も沢山咲いています。写真を撮りながら1時間ほど登ると渓流が二股に別れていたため、登山道のない右側の沢に入ることにしました。
抱接中のシュレーゲルアオガエル

 長靴に履き替えて、沢の中に入っていきます。小さな淀みの石をはぐりながら上流に詰めていきます。10分位登った頃でしょうか。石の下から全長5cm近いハコネサンショウウオの幼生が見つかりました。典型的な西日本型の綺麗な模様の幼生です。また冠山の個体群は、ハコネサンショウウオの分布のほぼ西限に位置します。
ハコネサンショウウオ幼生の黒い爪
ハコネサンショウウオの3年幼生
幼生 カラーバリエーション
幼生の顔のアップ(人面顔)

 この沢でハコネサンショウウオの生息が確認できたため、少し腰を据えて探してみることにします。でもその前に腹ごしらえ。十数年ぶりに食べる母親の手弁当です。昔と全く変わらない懐かしい味につつまれて、またもや蝶々を採りに通った頃の思い出がよみがえります。沢のあちらこちで早春にだけ出現するスギタニルリシジミがチラチラと舞っています。
ハコネサンショウウオが生息している渓流
 弁当を食べ終わり一段落してから、幼生が隠れていそうな石を一つ一つはぐっていきます。いました。ここぞと思う場所の石の下には必ず1匹以上の幼生が見つかります。あっと言う間に多数の幼生を採集することができました。その中から色々な模様のタイプを選んで今年上陸しそうな6匹だけ持ち帰ることにしました。それにしても模様が変化に富んでいて別種のように見えます。また幼生の顔をよーく見ると人面魚のような面構えです。


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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