その23 春の奄美大島、生きもの紀行-4
さくちゃんの生きもの便り(その23) 春の奄美大島、生きもの紀行-4

 降り続いていた雨も止み、絶好のコンデションで夜を迎えました。「今夜はスッゴーイ」などと、知らない人が聞いたらとってもHに聞こえるような話しをしながら、車を中央林道に向けて走らせます。今夜は名瀬から金作原を抜けて、途中の渓流を調査しながら住用村に抜ける予定です。市内を抜け山道に入ると、リュウキュウカジカガエルヒメアマガエルが車に驚いて飛び跳ねます。やっと奄美のステージ、幕が上がり始めました。アマミハナサキガエルも沢山います。そのたびに車から降りてバシバシ、シャッターを切ります。
 アマミトゲネズミアマミヤマシギが車のライトに照らし出されます。役者がそろってきたなーという感じ!、これらも車から降りてシャッターを切ります。以外と近くまで寄っても逃げません。
 アマミノクロウサギも姿を現しました。想像してたより随分大きく丸まるとしています。こちらもあまり人を怖がりません。近寄ってシャッターを切ります。5m位近寄った時です。ジジッ・ジジッと甲高い鳴き声を残して藪の中に消えていきました。ライトを消すと奄美の深い森にあたたかく包まれる気がします。
 アマミトゲネズミやアマミノクロウサギ、アマミヤマシギ等は奄美大島と徳之島だけに棲む固有種です。沖縄と同様にこれらの島も肉食中型哺乳類がいないため、他の動物(人間を含めて)を恐れずに生活してきたのだと思います。それが災いして現在では、人間が持ち込んだマングースやイエネコ等の野生化や開発行為の影響受けてどの種も激減していると聞きます。
 その後もアマミノクロウサギを見たりカエル達を撮影しながら2時過ぎに住用村の川内に到着しました。

 

 さて、ここから第2ラウンドの開始です。
 まず最初は集落周辺の田畑や草地で多く見かける、青色系カエルの採集です。奄美大島にはハロウェルアマガエルアマミアオガエルが分布しています。1箇所の畑で沢山鳴いているのを確認し、採集に移りますがなかなか見付かりません。1時間かけてやっとの思いでハロウェルアマガエルを1匹採集することができました。これでKさんへのお土産は完了。

ハロウェルアマガエル

 続いてはタシロヤモリというヤモリの採集です。街灯のある民家の壁や公衆電話等を覗いていきますがちっとも見付かりません。あきらめかけたころ、ガソリンスタンドと何かの工場の壁で動き回るキ印を発見し、やっとの思いで4匹採集しました。これでHさんへのお土産も完了です。
 でも採集した4匹をよく見ると、どうも1匹はオンナダケヤモリのようです。
 タシロヤモリは外来種のヤモリで日本では琉球列島に分布していることになっていますが、奄美大島以外では見かけることの少ないヤモリです。沖縄紀行で紹介した、ホオグロヤモリに似ていますが、尾にトゲトゲ(環状突起)がないため簡単に区別がつきます。
 オンナダケヤモリも外来種のヤモリで日本では琉球列島に分布するヤモリですが、こちらも見かけることの少ないヤモリです。皮膚がつるっとしていて、手足の指が短く幅広いことで区別できます。



タシロヤモリ


オンナダケヤモリ

 さて、時計を見ると4時を指しています。今夜の観察はこれで終了。眠い目を擦り、ボロボロになった体でホテルに向かいました。妻も頑張って起きていてくれたため、居眠り運転をすることもなく明け方近くにホテルに戻ることが出来ました。




住用村のマングローブ林
  5月28日

 11時頃にチェックアウトを済ませ、観光がてら南部の湯湾岳を次回のために下見しました。この地域は以前、現皇太子や英国のエジンバラ公が訪れたことがあるらしく、他の林道とは違い、「ここまですることはないでしょ」と言うくらい実に良く道路整備が進んでいました。

 次に住用村のマングローブ林や大島紬の工場を見学し、物産センターで買い物でも・・・と思い車を停めました。ところが駐車場の生け垣に、綺麗な昼蛾のキオビエダシャクが飛び交っているではないですか。早速、ネットを出して採集です。密かに昼蛾のコレクションをしているため、久々に熱くなっての採集です。妻がイシガケチョウの羽化シーンも見付けてくれました。思いがけない収穫に時間を費やしましたがフライトの時間が近づいてきたので、空港に向けて車を走らせます。急ぎながらも、途中で奄美のおすすめ"鶏飯(けいはん)"という、ぶっかけご飯(実にうまい!!)はしっかり食べて奄美大島を後にしました。

キオビエダシャク
交尾中のキオビエダシャク
羽化したばかりのイシガケチョウ

 我が家に戻って採集個体とフィルムを整理しました。飼育下繁殖用とお土産用の生きもの達はみんな元気でした。ところが、持っていったはずのフィルムが1本足りません。しかも、27日の夜だけで撮りきった36枚撮りのフィルムが!!・・・あの夜何度胸を躍らせてシャッターを切ったことでしょう。当分立ち直れそうもありません。多分、胸ポケットに入れたままにしていたため、何処かに落としてしまったようです。今回の奄美行きは下見だったのだからと、あきらめるしかありません。
 そんなわけで今回珍しい生きものを紹介しながらも、今ひとつその瞬間の写真をお見せできないものがあったことが、残念です。こうなったらリベンジ!
 来年もまた妻と2人で奄美大島に入ることを決意し、今回の生きもの便りをおしまいにします。

6月26日   さくちゃんこと佐久間聡


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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