その23 春の奄美大島、生きもの紀行
さくちゃんの生きもの便り(その23) 春の奄美大島、生きもの紀行

※すべて拡大写真ありマス
 

 5月26日から28日までの3日間という短期間ですが、春の奄美大島に行って来ました。
 今回の目的は、シリケンイモリの基亜種(アマミシリケンイモリ)とイボイモリの観察と生態写真撮影及び採集です。
 イボイモリの生息環境調査は、奄美大島に生息するイボイモリも沖縄本島と同じような環境に生息しているかを調査することです。
 一方、シリケンイモリは沖縄本島及び属島に分布している沖縄亜種とどの様に違うのかを確かめることと、飼育下繁殖用に採集することです。
 奄美大島は、両生類を目的としては初めて入る島なので、いきなり結果が出せるとは思っていないため、下調べ的な要素が高いのですが、期待に胸を膨らませて5月26日の朝を迎えました。(絵:アダンの木(C)田中一村)

 毎度の事ながら今回も妻にアシスタント役をお願いし、2人では初めての奄美大島へ向けて出発です。沖縄での実績から今回も大活躍をしてくれることは間違いありません。今年始めての実力発揮の場、めきめきと腕を上げる妻におんぶにだっこを決め込んで、早朝に我が家を出発し、羽田から直行便で奄美大島に到着しました。
 空港では、予約していた車をレンタルし、早々に中部の住用村(すみようそん)に向かいました。
 今日の昼間の予定は、過去にイボイモリの目撃・採集記録が多くある住用村の三太郎峠とタカバチ山を越えて、川内川の源流部に当たる中央林道を北上し、金作原(きんさくばる)原生林を見て名瀬市に至るルートを下見することです。

 空港から車を走らせること約1時間、やっとこさで、三太郎トンネルに到着しました。でも三太郎峠に行くための旧道が見付かりません。行ったり来たりを繰り返していると抗口の側に大きな水溜まりがあることに気付きました。さっそく車を停めて調べます。いましたいました。水溜まりの中は、黒いカタカナのキの字だらけです。沖縄ではホオグロヤモリで、また東南アジアではトッケイヤモリで、街灯のある建物の壁がキ印だらけなのですが、奄美大島では水溜まりがシリケンイモリによってキ印だらけです。
 さっそく写真撮影と採集を行い、目標の5ペアを確保しました。
 シリケンイモリは沖縄紀行でもたびたび登場していますが、実は2亜種に区分されていて、奄美大島とその属島に分布するものを基亜種(アマミシリケンイモリ)といい、沖縄本島とその属島に分布するものを沖縄亜種(オキナワシリケンイモリ)といいます。
 今回の調査で奄美大島産の個体を数多く見ることができ、オキナワシリケンイモリは、無斑?白い地衣状斑が多く出る個体まで斑紋のバリエーションが沢山あるのに対し、アマミシリケンイモリは無斑の個体がほとんどで、白い地衣状斑がほとんど出ないのに驚きました。



アマミシリケンイモリが生息する池


奄美のキ印君(アマミシリケンイモリ)
 

 さて、国道が新しくなっていて、地形図が役に立たないことが解り、住民に道を尋ねながらやっとの思いで三太郎峠を越えて北上し、真新しいクロウサギの糞を見付けたりしながら中央林道に到着しました。ここからが本番だと思ったのですが、なんと!!林道は未舗装、しかも荒れ放題。慎重に車を走らせますが、ガンガン車の底をすります。でも行くしかありません。

新鮮なアマミノクロウサギの糞

 途中環境が良さそうな場所の石をはぐりながら進みますが、出てくるのはサソリモドキばかりです。それにしてもサソリモドキの多い島です。こんな島は初めてです。
 サソリモドキは、一見厳つい体型をしていますが、サソリのように猛毒は持ってなく、お尻から蟻酸を飛ばすだけです。子供のためにお土産として3匹だけ採集しました。


サソリモドキ
しっぽを立てて蟻酸を飛ばす
サソリモドキ
サソリモドキを手に乗せて記念写真


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
お便りの宛先は、delias@ss.iij4u.or.jp です。