その46 ヒダサンショウウオ観察日記−1
Ikimono Dayori sono46
ヒダサンショウウオ観察日記 Page1

 寒かった冬も緩み始め、三寒四温の日々に春の到来を感じさせてくれる様になってきました。
 ここ数年の生きもの観察は、ヒダサンショウウオに始まりヒダサンショウウオに終わります。
 その理由はヒダサンショウウオの生態にあります。
 ヒダサンショウウオは、本州の関東以西に分布する、西日本を代表する流水産卵性のサンショウウオです。
 ヒダサンショウウオの成体は、気温と水温とが逆転する(水温の方が高くなる)12月頃から渓流に集まり、2月から4月にかけての繁殖期に渓流内の大きな石の裏に1対(2房)の卵嚢を産卵します。産卵を終えた雌は、直ぐに渓流を離れ樹林地へと帰っていきますが、雄は繁殖期が終わる4月頃まで雌を待ち受けています。
 孵化した幼生の多くは、渓流内で越冬し翌年の夏頃に幼体となり上陸します。
 したがって、幼生は通年渓流内で観察することが出来るのですが、成体の観察は12月から4月頃、卵嚢の観察は2月から5月頃に限られます。
観察風景
観察風景(左:岡本さん・右:河村さん)
 ヒダサンショウウオの説明はこれぐらいにして、観察紀のスタートです。

2005年12月23日
 そろそろヒダサンショウウオが渓流に集まってきている時期です。
 東京のサンショウウオ観察に一緒によく出かけている河村さんと同好のパトさんこと岡本さんと私の3人で、2005年最後のヒダサンショウウオの観察に行ってきました。
 観察場所は、軟弱にも青梅市の車横付けポイント。
 JR青梅線の小作駅で集合。いつものように河村さんの車でポイントまで移動です。

ヒダサンショウウオ越冬幼生  長靴に履き替え、ザックにカメラや昼食を入れ込んで、バールを片手に沢に分け入ります。
 沢に入ってすぐに越冬幼生を確認しました。
 幼生は渓流の淀みの部分や流路幅が広くなって流れが緩やかな場所の石の下に潜んでいます。
 久しぶりに写真撮影して、上流部を目指します。
 ※小さい写真はクリックすると大きい写真が表示されます。
ヒダサンショウウオ越冬幼生

 次に現れたのは、タゴガエルです。この沢には3年ぐらい通っているのですが、タゴガエルを確認したのは初めてです。
今まで確認できなかったことが不思議だったので、一安心です。
 越冬幼生とタゴガエルが確認できたので、ヒダサンショウウオの成体にターゲットを絞って沢をつめます。
 岡本さんとヒダサンショウウオを観察するのは初めてなので、何とか成体を見付けたいと思い、バールを使う手にも力が入ります。
タゴガエル
タゴガエル
 河村さんと岡本さんはどんどん沢をつめて姿が見えなくなってしまいました。
 可能性のありそうな石を丹念にひっくり返していきます。しばらく沢を登るとこれは!という石を発見。河村さん達がひっくり返していない石のようなので慎重にひっくり返します。
 いました。関東の個体では比較的綺麗なヒダサンショウウオの成体です。いつもだったら写真撮影後リリースするのですが、一時捕獲して2人と合流するまでキープすることにします。
 その後も、ぽつ・ぽつと見付けて6匹になったところで2人と合流。河村さんと岡本さんも6匹程度見付けたとのこと。
 この時期の成体は、1つの石の下に集まっていることはなく(繁殖期は集まっている)、全て単独で石の下に潜んでいました。
 サンショウウオの話しで盛り上がりながら昼食をとり、捕獲個体を撮影してリリースしました。

ヒダサンショウウオ成体 一時捕獲した個体
ヒダサンショウウオ成体
一時捕獲した個体

 今日の観察はこれでおしまいです。


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
お便りの宛先は、delias@ss.iij4u.or.jp です