その40 東京産サンショウウオ・イモリ観察日記−1
Ikimono Dayori sono40

東京産サンショウウオ・イモリ観察日記 Page1

 桜の花も満開を過ぎ、めっきり春めいた陽気の4月10日、日本在住のアメリカ人のTさんを誘ってフィールデングに出かけました。
 Tさんは、両生・有尾類(イモリやサンショウウオ)好きで、自宅では何本もの人が中に入れるぐらいの巨大水槽で、シリケンイモリやニホンイモリを沢山飼育しています。しかも研究熱心で、文献を収集したり、シリケンイモリを観察するために夫婦で沖縄旅行に出かけたりと、そのまじめな取り組みと人柄がとても好感の持てる、愛すべき変なアメリカ人なのです。
 また、それを暖かく見守り、協力している奥様も愛すべき変な日本人・・・いや間違い・・・心優しき日本女性なのです(笑)。そう、我が家の奥様と同類の素敵な女性です(ヨイショット)。
 以前自宅にお伺いした時に、「沖縄本島で初めて見つけたシリケンイモリがこの子でファーストコンタクトと名前を付けました」・・・といいながら、美味しい手作りのクッキーと紅茶をだして下さいました。その節は、長居し、お世話になりました。
越冬幼生を撮影するTさんとそれをひやかすKさん
大きな石をバールを使っておこし、卵嚢や成体を探すKさんとさくちゃん
  写真上: 越冬幼生を撮影するTさんとそれをひやかすKさん
  写真下: 大きな石をバールを使っておこし、卵嚢や成体を探す
Kさんとさくちゃん

 話は横道にそれてしまいましたが、今日の予定は、午前中に渓流産卵性のヒダサンショウウオを観察し、午後からトウキョウサンショウウオとニホンイモリを観察するという欲張った計画です。
 ヒダサンショウウオとトウキョウサンショウウオだけだったら、私1人でも案内できるのですが、ニホンイモリは自信がありません。なにしろ、東京産のニホンイモリは2・3回しか観察したことがないのですから。
 そこで、サンショウウオの観察によく一緒に出かけているKさんを助っ人にお願いし、3人で出かけました。

 さてKさんの車に乗り込み出発です。Tさんが助手席、私が後部座席です。
 Kさんは、車を買い換えて運転はおとなしくなったといっていますが、相変わらずものすごいスピードでコーナーに突っ込んで行きます。
 私は、Kさんの運転技術を知っているし、慣れているのですが、初めて乗ったTさんは190cm以上ある大きな身を縮めています。
 イモリやサンショウウオの話をしているうちに、目的地の沢にあっという間に到着しました。
 スパイク付きの長靴に履き替え、ゴム手袋をしてバールを持ち、撮影機材と昼食を背負って、ヒダサンショウウオの観察開始です。
ヒダサンショウウオが生息する沢

 まず最初は越冬幼生の観察です。
 沢に分け入って、水際の石をはぐりながら上流に向かって進んでいきます。
 探し初めてすぐに1匹目の幼生を見つけました。でもこの個体は撮影する前に逃げてしまいました。
 上流に向けてどんどん沢を登っていきます。流れが緩やかな場所があったので腰を据えてさがすことにします。
 いました・いました・・・ヒダサンショウウオの越冬幼生です。しかも2匹!!
ヒダサンショウウオの越冬幼生
Tさん撮影の越冬幼生
ヒダサンショウウオの越冬幼生
Tさん撮影の越冬幼生

 いくら渓流性のサンショウウオといっても、幼生は、岸の近く、流れが穏やかな場所の石の下に潜んでいるのです。
 Tさんを呼んで観察です。Tさんは初めて見るヒダサンショウウオの幼生にいささか興奮気味。「スゴイ・スゴイ」と言いながら、一生懸命シャッターを切っています。
 あまりに喜んでくれるので、こちらも嬉しくなってしまいます。
越冬幼生を手に持って撮影するTさん
越冬幼生を手に持って撮影するTさん

 久しぶりに自分も写真撮影することにしました。もちろん被写体は写真撮影に夢中になっているTさんとそれを見守るKさん、そしてヒダサンショウウオの生態写真です(その1写真)。なかなか良いポーズをとってくれない幼生に苛立ちながら、シャッターを切ります。
 一通りの撮影を終えて、幼生をリリースし、次はいよいよ成体と卵嚢を探します。



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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