さくちゃんの生きもの便り(その13)
春の女神 ギフチョウ 2

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生態

 ギフチョウ、ヒメギフチョウとも成虫は年1回、春に羽化します。羽化の時期は産地や気候によって違いますが、低地や温暖地では、その地のソメイヨシノの開花時期に先立って羽化します(ヤマザクラやミツバツツジ開花時期とほぼ同時期)。
 ギフチョウの羽化のおよその目安としては、4月上旬前後です。最も早いのは岐阜県の平地部で3月下旬、西日本〜関東地方の低地部で4月上旬、中部山岳地域や豪雪地域は5月に入ってから羽化が始まります。
 ヒメギフチョウの羽化は、北海道で4月下旬〜6月、本州では4月中旬〜5月上旬となります。

サンヨウアオイに産み付けられた
ギフチョウの卵塊(広島)

 羽化した成虫は、晴天で風が弱く暖かい日時を好んで活動し、曇天や低温時にはあまり活動しません。活動が最も活発になるのは、10時頃から12時頃までの午前中です。
 成虫は、林床に木漏れ日がさし込み、カタクリやスミレ等が咲くような明るい林内や林内の空地を好んで飛び回り、スミレ類やカタクリ、ミツバツツジ等のツツジ類、ヤマザクラ等に吸蜜に訪れます。上記の花色と同じ青色や薄紫色に強く反応し、この色の捕虫網を持っているとギフチョウが近寄って来る事もあります。

 卵は、ギフチョウの場合はカンアオイの仲間の葉裏に数個から十数個の卵塊を産み付けます。1mm程度の球形で綺麗な卵です。ヒメギフチョウは、主にウスバサイシンに産み付けます。

ヒメカンアオイ(兵庫産)
ヒメカンアオイに産み付けられた
ギフチョウの卵塊
(兵庫産)
ウスバサイシン(岩手産)
ウスバサイシンに産み付けられた
ギフチョウの卵塊
(岩手産)
ギフチョウの吸蜜植物の
一つカタクリ

 幼虫は真っ黒な毛虫で通常は葉裏でカンアオイを食べながら集団で成長します。ヒメギフチョウは、2齢幼虫以降気門下に黄斑が現れギフチョウと区別できます。幼虫の期間は40日〜60日ぐらいです。
 終齢幼虫は分散し、落葉の下や植物の根元付近で蛹化します。夏〜冬を蛹で過ごしたギフチョウはヤマザクラやカタクリ等の開花にあわせて羽化し、春の女神として明るい林内を飛び回るのです。


ギフチョウの終齢幼虫
ヒメギフチョウの終齢幼虫


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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