さくちゃんの生きもの便り(その11)
 
●晩秋の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行 その2

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11月27日
  今日は朝からいい天気です。
  ホテルの庭にあるバナナを食害している日本最大のセセリチョウ、バナナセセリの幼虫を採集したり、石垣模様のタテハチョウの仲間のイシガケチョウの写真を撮っていたため、出発が少し遅くなってしまいました。
  バナナセセリは元々ベトナムやタイ等のインドシナ半島に分布していたのですが、ベトナム戦争時にアメリカ空軍機等に紛れ込んで住み着いたと思われる、沖縄の悲しい歴史を秘めた帰化昆虫なのです。
 10時近くになって、ヤンバルの森にある渓流の一つに入りました。途中、妻がオキナワキノボリトカゲの幼体を見付けましたが、気温もあまり高くないので、昼間活動するトカゲ等は希望薄です。

オキナワキノボリトカゲの幼体

バナナセセリの幼虫
バナナセセリによる
食害を受けるバナナ
イシガケチョウ

 今日もイボイモリに焦点を絞って活動開始です。可能性のありそうな石や倒木を片っ端からひっくり返します。私はユンボ・私はユンボ・・・・・と呟きながら頭はからっぽ。体はポンコツ工業機械。かれこれ、一時間位経過したでしょうか。一抱えもある大きな石をやっとの事でひっくり返した瞬間。真っ黒な固まりが・・・!!やったー!「タカー(妻の呼び名)いたよー!イボイモリ!!」。妻が近づいて覗き込みます。大きなイボイモリを見て、「へー凄いねー」とか言いながらニヤニヤ笑っています。僕が興奮している姿が滑稽だったのかもしれません。しかし、イボイモリはピクリともしません。20cm近くはあろう立派な雌の成体です。
  痛い腰を延ばしてカメラをセットし写真撮影です。このために何回沖縄に通ったことか。でも1匹見つけたらこっちのもの。生息環境を頭にインプットします。長年の経験から、最初の1匹を見つけることがいかに大変か。また逆に、1匹見つけたら後は何とかなる事を身をもって体験しています。
  場所を少し移動して、同じような環境にある石をはぐります。いた!!今度は少し小さいのですが雄のようです。別の場所でも複数の個体を確認しました。イボイモリは沖縄県の天然記念物のため採集は愚か触ることもいけないのですが、雌雄を確認するために、少しだけさわって総排出腔を確認させてもらいました。イボイモリを観察できただけで充分です。まだ、日は高いのですが、走ったことのない林道や一般道をドライブし、概査しながらホテルに戻りました。


イボイモリ♀

イボイモリ♂

イボイモリの生息環境

  最後の夜です。二人共かなり疲れていたのですが、イボイモリの活動している姿を撮影したくて、最初に見つけた沢に入っていきました。でもイボイモリは見ることができませんでした。ちょっと残念ですが、でもいいんです。足下では相変わらずカエルの亜成体が飛び跳ねています。ヤンバルクイナが不気味に鳴いています。リュウキュウマツムシタイワンクツワムシも鳴いています。渓流のせせらぎも聞こえます。何と動物や植物の息吹に満ち溢れた森なのでしょうか。闇の恐怖に怯えながらも心が解放される森です。
 時間は早いのですがホテルに戻りました。満点の星空です。2人で静まり返ったホテルのビーチでビールを飲みました。こうしてビーチに出て2人でビールを飲むのは何年ぶりかなーと思いながら。そして、来年もまた二人で来るかーと思いながら。



リュウキュウマツムシ

タイワンクツワムシ(褐色型)

晩秋の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行 その3に続く
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アメイロイボイモリ その3で登場!

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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