Ikimono Dayori sono71
カエル池プロジェクト2009〜2010(後編)
2010年4月10日
里はツツジの花が咲き乱れ、里山は雑木林が萌黄色に淡く色づき山桜は見ごろを迎えました。
カエル池の産卵状況調査の日です。
里の風景
里山の風景
調査予定がたたず、連絡が遅れたにも係わらず、東京農大のヤド研(野生動物研究会)のメンバーが5人を含む10名が参加して、調査開始です。
荷物を置いて、谷戸の下流側から調査を始めることにします。
天気もよく、気温が上がり、成虫越冬したタテハチョウの仲間やコツバメやミヤマセセリが飛び交い、石垣からはアオダイショウが顔をだしています。
ヤマアカガエルのオタマジャクシがたくさん泳いでいるが見えます。
ヤマアカガエルのオタマジャクシ(幼生)
カエル池プロジェクトを始める前は、カエルの卵塊はほとんどありませんでした。
それが今では、多くのカエルが産卵に訪れるようになり、数え切れないほどのオタマジャクシが育っています。
カエルは、食物連鎖構造(生態系ピラミッド)において、草食昆虫等に次ぐ低次消費者にあたり、ヘビ等の爬虫類や猛禽類やサギ類等の鳥類、タヌキやイタチ等の中型哺乳類の餌になり、これらの中次〜高次消費を支えています。
カエルが増えると言うことは、地域生態系が豊かになっていると言え、カエル池プロジェクトの成果を象徴しています。
トウキョウサンショウウオはというと、カエル池の周辺から眺めても少数の卵嚢しか確認できません。
おまけに、アライグマの生活痕(足跡)も散見されます。
不安な気持ちを抱えながら、池の中に入って葦簀のシェルターをはぐってみます。
トウキョウサンショウウオの調査風景
葦簀の下に設置した枝を見ると複数の卵嚢が産み付けられているのが見えます。
どの池においても、シェルターとして設置した葦簀の下で多くの卵嚢が確認されました。
トウキョウサンショウウオの多くは、アライグマの襲撃を逃れて葦簀の下で産卵したと思われますが、事前調査で葦簀の下以外で確認した卵嚢がほとんど無くなっているところを見ると、葦簀の下以外に産み付けられた卵嚢は、アライグマに捕食された可能性が高いと考えられます。
アライグマによる両生類の食害は、ここ数年、西多摩の各地で拡大している事が確認されており、トウキョウサンショウウオに対しては、産卵期に多くの成体や卵嚢が集中的に捕食され激減したと考えられる生息地も多く、深刻な影響が明らかになっています。
今春は、東京都で第一号の里山保全地域に指定された横沢入(東京都あきる野市横沢入)において、アライグマによるヤマアカガエルの大量食害が発生しました。
前記したように、両生類は食物連鎖の低次消費者として在来肉食動物の生活を支えていることから、両生類の減少は、生態系全体の崩壊を招く可能性が高いと考えられます。
アライグマの足跡
東京都に隣接する神奈川県、埼玉県、千葉県が、外来生物法(略称)に基づき、生態系に係る被害の防止を第一の目的にアライグマ防除を積極的に行っているのに対し、残念ながら東京都は鳥獣保護法(略称)に基づく有害鳥獣駆除により、農作物被害の出た一部の自治体において個別に行われているに過ぎません。
東京都の無策ぶりは、都下の在来野生動物や生態系に悪影響を与えるだけではなく、東京都で増えているアライグマが、駆除を行っている他県への供給源となって、悪影響を与えることも考えられます。
小笠原のグリンアノールの二の舞いにならないように、アライグマ防除の早急なる対応が求められます。