Ikimono Dayori sono70
カエル池プロジェクト2009〜2010(前編)
トウキョウサンショウウオ( Hynobius tokyoensis )は、東京都西多摩郡多西村(現あきる野市)産の標本をもとに、1931年に田子勝彌氏によって記載された小型のサンショウウオです。
トウキョウサンショウウオは、群馬県を除く関東地方の比較的狭い地域と福島県太平洋沿岸の一部の地域に生息し、都内では狭山丘陵・多摩丘陵から五日市・八王子にかけての低山地の雑木林に生息しています。
しかし、両生類(カエルやサンショウウオ)を取り巻く環境は悪化する一方です。
生息環境の分断・減少や消失、または質的悪化。
アライグマやウシガエル、アメリカザリガニ等の外来生物による捕食圧。
それに加えて、カエルツボカビ症やラナウイルスによる影響も懸念されています。
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宅地、ゴルフ場、最終処分場等の開発によって地形が改変されると、生息環境(谷戸田等の繁殖地や樹林地)が消失したり縮小し、その地域に生息する個体群が絶滅したり、生息数が激少してしまいます。
トウキョウサンショウウオの基準産地である草花地区は、ゴルフ場開発で大部分の生息地が消失しました。 |
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繁殖環境である谷戸田や湿地と非繁殖期の生息環境である樹林(雑木林)地との間に道路や宅地、擁壁等ができてしまうと、繁殖のために谷戸に集まることができなくなります。
繁殖地に移動できなくなった個体群は、生活環が途絶えてしまい、急速に衰退していきます。 |
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開発から免れた生息環境も、減反政策や後継者不足等により耕作放棄が進み、管理されなくなった谷戸田は、土砂の流入・堆積や植物遷移により乾燥化し、雑木林は単層化が進み保水力が低下しています。
現在の生息地はこのように、質的に悪化した環境がほとんどです。
このような場所に産卵された卵嚢は、晴天が続くと干からびたり、雨が降ると流されてしまい、結局死んでしまいます。
このような状況が続くと、生活環が途絶えてしまい、急速に衰退していくのです。 |
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アライグマやアメリカザリガニ等の外来種による食害も無視できない状況になっています。とくにアライグマは、雑食性の中型哺乳類であり、生態系の上位種に位置するため、両生・爬虫類、鳥類、小型哺乳類を捕食し大きな影響を与えていると思われます。
神奈川県の三浦半島に生息するトウキョウサンショウウオの個体群は、アライグマの捕食圧により絶滅に瀕している局所集団もあるほどです。都下の生息地においても、アライグマに捕食された卵嚢や成体が確認され、徐々にその数と範囲が広がっています。 |
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温暖化や紫外線量の増加、酸性雨等の地球規模での環境の変化やカエルツボカビ症やラナウイルスによる影響も懸念されています。
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中でも、里地・里山に生息するカエルやサンショウウオの生息に大きく影響を与えているのが、繁殖環境の減少や消失です。
里地・里山に生息するカエルやサンショウウオは、稲作に伴う土地利用に大きく依存して生息しています。
水田や溜池、用水路等は、お米を生産する用地や施設だけではなく、カエルやサンショウウオにとっても重要な繁殖環境として機能していたのです。
その水田が、1970年から本格化する減反政策と、日本の工業化に伴う農業離れによる後継者不足等により、次々と休耕田化していきました。
管理されなくなった水田には、徐々に土砂や落ち葉が流入・堆積し、水深が浅くなっていきます。渇水期には干上がり植物が繁茂し、乾燥化に拍車をかけます。
現在の谷津の休耕田は、このような経緯をたどり水深が浅くなった場所がほとんどです。
このような休耕田は、貯水量が少ないため、晴天が続くとすぐに干上がり、せっかく産卵されたカエルの卵塊やサンショウウオの卵嚢は、干からびて死んでしまいます。
休耕田の乾燥化がもっと進むと、休耕田に産卵することができなくなり、用水路の溜まりに産卵する様になるのですが、このような場所に産卵された卵嚢や卵塊は、雨が降ると流されてしまい、結局死んでしまいます。
このような状況が続くと、カエルやサンショウウオの生活環が途絶えてしまい、急速に衰退していくのです。
今まさにこのような状況が日本各地で起こっています。
西多摩地域のカエルやサンショウウオの状況も同じです。
このような状況を黙って見ているわけには行きません。
「この状態を何とかせにゃーならん!・・・この谷津田をどげんかせにゃーならん!」てな調子で、ヒダサンショウウオと異種同名、ノンちゃんことひださんの旗の下、ここ掘れワンワンと老若男女が集結したのが「カエル池プロジェクト」です。
「カエル池プロジェクト」は、2006年の冬期から地権者の理解と協力を得て、スコップ片手に乾燥化の進んだ休耕田で、両生類の繁殖環境の復元・創出を目的として、いままでに数多くのカエル池を掘っています。
「カエル池プロジェクト 2009〜2010」では、2009年12月に土砂が堆積した既設のカエル池の浚渫作業と新たな「カエル池」づくりを行い、アライグマ対策として、カエル池の水面にシェルターを設置します。
また、「カエル池」づくりによる、両生類の生息環境の再生・創出の効果を検証するためのモニタリング調査として、2010年の春に観察会を行う予定です。この様子は後編で報告します。
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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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