Ikimono Dayori sono66
2009年トウキョウサンショウウオ観察日記
トウキョウサンショウウオ産卵状況一斉調査(大荷田川流域)
2009年3月28日 今年も西多摩自然フォーラムとトウキョウサンショウウオ研究会が主催するトウキョウサンショウウオ一斉調査に参加しました。
トウキョウサンショウウオ一斉調査は、1993年以来毎年、青梅地区・五日市地区・日の出地区の3地区を対象としてトウキョウサンショウウオの産卵状況調査を行い、貴重なデータを蓄積しています。
私は、毎年青梅地区(大荷田川流域)の調査に参加しています。
9時30分にJR青梅線の小作駅に集合。
今年は、いつものメンバーの西多摩自然フォーラム代表の久保田さんとカエル王子こと河村さんに加えて、新聞やHPを見て参加して頂いた6人のニューフェイスの9名で調査スタートです。 全員が自己紹介した後で、さくちゃんが徹夜で作成したトウキョウサンショウウオの資料を説明し、最初の調査ポイントの大荷田川へ移動します。
雑木林は、芽吹き始めたばかりで、樹冠が淡く薄黄緑色に染まり、林床ではアセビやニリンソウが開花し、春の訪れを告げています。
最初の調査ポイントは大荷田川沿いにある池です。
この池には、毎年多くのトウキョウサンショウウオが産卵に訪れる場所です。
トウキョウサンショウウオを調査する参加者 |
例年より水量が少ないのが気になりますが、水辺から水の中を覗くと多くの卵嚢が目に入りました。今年も順調に産卵に訪れているようです。
タモ網や熊手を使って水が濁らないように慎重に卵嚢を集めます。
今年は暖冬だったため、産卵は早くから始まったのですが、その後の低温と降雨が少なかったため、だらだらと産卵が続いているようです。
タモ網で、水底の落葉をすくうと、落葉の下に産み付けられた卵嚢が現れます。
卵嚢は一時捕獲し、調査終了後にカウントし、池の中にリリースします。
約50対(100房)を確認し、幸先のよいスタートです。
トウキョウサンショウウオの卵嚢とアズマヒキガエル |
大荷田川を上流に進み、ポイントを移動しながら、調査を行ないます。
次のポイントは、道路沿いの湿地です。以前は多くの産卵が確認されたのですが、湿地の乾燥化と乱獲によって近年産卵数が激減している場所です。
今年も水深がほとんど無く産卵数も少なかったのですが、去年より多くの卵嚢とアズマヒキガエルの成体を確認しました。
卵嚢の多くは倒木の下に産み付けられており、乾燥しない場所を選んで産卵しているようです。
今の内に浚渫しないと、この湿地を繁殖地とする局所集団は絶滅するものと思われます。
シュンラン |
ここから先は、雑木林内の谷戸の中を流れている複数の細流が調査ポイントです。
これらのポイントは、谷戸田が耕作放棄され休耕田になり、土砂の堆積や植物遷移により乾燥化が進み、今では用水路として活用されていた細流だけに水が残り現在の産卵場となっているところです。
何組かのグループに分かれて細流を調査します。
ザックを置いて、思い思いに成体や卵嚢を調査したり撮影したりしてすごします。
雑木林の林床でひっそり咲いているシュンランを見つけました。
お気に入りの植物なのでついついシャッターを切る回数が増えてしまいます。
さて、そろそろ調査に加わりましょう。
調査風景
見つけた卵嚢と成体をバットに一時捕獲し、カウントした後で元の場所にリリースしながら調査を続けます。
一時捕獲した卵嚢と成体
でも、元の場所にリリースできない場合もあります。
それは、造成等で繁殖地が改変される恐れがあり、そこにリリースすると生息できない可能性が高い時です。
その様な場所で確認された成体や卵嚢は、なるべく近くの安全な繁殖地にリリースしてやります。
今回の調査でも、造成中の水溜りに産卵された卵嚢と成体を見つけたので、近くの湧水が湧き出ている池にリリースしました。
湧水が湧き出す池にリリースした卵嚢と成体
調査結果を記録する参加者 |
全てのポイントの調査を完了し、一斉調査もこれで終了です。
西多摩自然フォーラム代表の久保田さんから調査結果の総括を行なっていただきました。
今年はいつもの年より卵嚢数が少なかったようです。
この傾向が一時的なものだったら良いのですが、おそらく土砂の堆積や植生遷移が進み乾燥化が進んだこととアライグマによる捕食圧が影響しているように思われます。
トウキョウサンショウウオをはじめとして里地里山に生息・生育する生物種群は、雑木林管理や池の浚渫等、人為的な維持・育成管理を行なわなければ衰退してしまう生きものなのです。
カタクリ |
そろそろ、浚渫を行い繁殖地の質的改善を図らなければ、取り返しがつかなくなる時期なのかもしれません。
最後に、管理された雑木林の林床に群生するカタクリの花を見て帰路につきました。