その53 アカハライモリ(ニホンイモリ)観察日記−2
Ikimono Dayori sono53
アカハライモリ(ニホンイモリ)観察日記 Page2

 午後からはいよいよアカハライモリの観察です。
 河村さんは稲蒔きを手伝っていたので、一人で細流の上流部にあるイモリが集まるポイントに向かいます。
 新緑が綺麗だなー。この時期の雑木林は本当に気持ちいいです。
 何時もイモリが集まっている場所にザックを置いて水中を覗き込みます。
 複数のアカハライモリが確認できます。雄は繁殖期の婚姻色が出ています。

アカハライモリ アカハライモリ(婚姻色が出た♂)
アカハライモリ
アカハライモリ(婚姻色が出た♂)
ツチガエル ホトケドジョウ
ツチガエル
ホトケドジョウ

 タモ網で水中をすくうと、ツチガエルホトケドジョウが見付かりました。
 ホトケドジョウは産卵前のため、お腹がパンパンです。

スペース 東京都西多摩地域産 関東低地型の腹部と尻尾 東京都西多摩地域産 関東低地型の腹部と尻尾

 

東京都西多摩地域産 関東低地型の腹部と尻尾

 ここでアカハライモリ(Cynops pyrrhogasterについて詳しくお知らせしましょう。
 アカハライモリは、日本では一般的な有尾類ですが、世界中で日本にしか生息していない固有種です。イモリ(Cynops)属の中で、最も北に分布している種で、下北半島が北限です。
 日本に生息するイモリ属は、アカハライモリと南西諸島に生息しているシリケンイモリの2種です。
 アカハライモリは、地域によって遺伝的にも形態的にも違いがあることから、種分化の途上にあると考えられています。
 遺伝的には、東北集団・関東集団・西日本集団・南九州集団の4グループに分けられ、中部や近畿地方を含む本州中央部には、東北集団・関東集団・西日本集団の中間的特徴を持つも集団や各集団の特徴をモザイク型に持つ集団ものがいます。これを中間型と呼んでいます。また、各集団にも地域的なサブグループがあります。
 東京に分布しているアカハライモリは関東集団の低地型で、尻尾が短く幅広い特徴があります。
 さくちゃんが最もお気に入りで、最も美しいと思っている紀伊半島南部に生息する集団と比較してみてください。
 両方の写真とも繁殖期の婚姻色が出た雄です。
 尻尾の長さや幅、婚姻色等に顕著な違いがあることがわかると思います。

東京都青梅市産 婚姻色が出た♂
東京都青梅市産 婚姻色が出た♂
和歌山県熊野川産 婚姻色が出た♂
和歌山県熊野川産 婚姻色が出た♂

 さて、イモリの解説はこれでおしまいです。
 アカハライモリを含む大部分のイモリには、皮膚にフグ毒と同じテトロドトキシンがあります。触ると危険という事ではありませんが、触った後は、必ず手を洗いましょうね。
 
6月10日 さくちゃんこと佐久間聡

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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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