その38 トウキョウサンショウオ観察日記−1(三浦半島個体群)
Ikimono Dayori sono38

トウキョウサンショウオ観察日記−1(三浦半島個体群) Page1
※写真をクリックすると拡大表示します

 今年は暖冬だったせいで、桜の開花も平年より1週間以上早く、3月下旬には見頃をむかえました。
 トウキョウサンショウウオの産卵も、当然早まるだろうと予想していましたが、年明けからの記録的な降雨の少なさで各地の産卵場の水が干上がってしまい、産卵のピークが大幅に遅れていました。
 3月下旬から4月の上旬にかけて、少しまとまった降雨があったため、長男を連れて、我が家から高速道路を使うと30分足らずで行くことができる、三浦半島の生息地に行ってみることにしました。
 横浜横須賀道路にのって目的地に向かって出発です。
 天気も良く気温も高めなので、高速道路は海に向かう車で若干混み気味なのですが、芽吹きだした樹木により周辺の山々は薄黄緑色に衣をまとい、満開を過ぎたヤマザクラやオオシマザクラの花弁がまるで生き物のように舞っています。
 助手席に座った長男とちょっとだけ快適なドライブを楽しんだ後、横須賀インターチェンジ料金所近くに車を停めて観察の開始です。
 まず最初は登山道沿いの水路です。
 崖からじわじわと湧水が湧き出る場所なので、今年のように雨が少ないと干上がっているのではと心配です。
 登山道沿いに丹念に見ていきますが、水がほとんど無く、水溜まりの部分も今にも涸れそうです。
卵嚢も見つかりません。
 まだ産卵していないのかなーと子供に話しかけながら、湧水が流れ出る穴の部分を覗き込んだときです。
登山道沿いの産卵場
登山道沿いの産卵場

湧水が湧き出る場所に産み付けられた卵嚢  ありました。トウキョウサンショウウオの卵嚢です。しかも大量!!
 湧水が湧き出る2つの穴を塞ぐように団子状態で産み付けています。
 外から見えるだけで10対の卵嚢が確認できます。おそらく穴の中の卵嚢を加えると20対強はあると思われます。
 水が少ないため、少しでも干涸らびないように湧水が湧き出る場所に集まって産卵したのでしょう。
湧水が湧き出る場所に産み付けられた卵嚢

 次は谷戸の繁殖池です。廃田の様な湿地帯に到着しました。土砂が随分貯まっていますが、大小の水溜まりが点在しています。
 林床にはイチリンソウが可憐な花を咲かせています。
 もう4月だというのにヤマアカガエルとアズマヒキガエルの卵塊が沢山あります。この水溜まりもつい最近まで水が涸れていて、カエル達も産卵できなかったのでしょう。
 本命のトウキョウサンショウウオの卵嚢をさがします。

イチリンソウ アズマヒキガエルの卵塊
イチリンソウ
アズマヒキガエルの卵塊

 ありました・ありました。水中の小枝にしっかり産み付けています。
 子供に持たせて記念撮影です。我が家の子供達はトウキョウサンショウウオのプルンとした感触が大好きです。冷たくて気持ちいいーとか言いながらムニュムニュしています。
 水底をよーく見ると、うっすら泥をかぶった卵嚢が沢山あります。
 まるで、アンモナイトの化石のようです。
 子供が持っていた卵嚢をリリースして、観察終了です。
水中の枯れ枝に産み付けられた卵嚢 卵嚢を手に持って記念写真
水中の枯れ枝に産み付けられた卵嚢
卵嚢を手に持って記念写真

ぷにゅぷにゅ状態が気持ちいい? うっすら泥を被った状態の卵嚢
ぷにゅぷにゅ状態が気持ちいい?
うっすら泥を被った状態の卵嚢

 今年もトウキョウサンショウウオを観察できてほっと一息です。
 でも、この場所を含む横須賀インターチェンジ周辺のトウキョウサンショウウオの生息地は、開発計画が進んでいるため、近い将来に消失してしまいます。
 三浦個体群の生息地は何処も孤立化し絶滅の危機に瀕しています。その中でもまとまった面積を持ったこの場所が失われると致命的な打撃を受けるように思えて成りません。
 来シーズンも観察できることを願って、車に乗り込み生息地を後にしました。

4月6日 さくちゃんこと佐久間聡


   

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
お便りの宛先は、delias@ss.iij4u.or.jp です