その28 三浦半島のトウキョウサンショウウオを探しに−1
Ikimono Dayori sono28

三浦半島のトウキョウサンショウウオを探しに Page1

 さて、大変遅くなってしまいましたがワールドカップイヤー第一弾の生きもの便りです。

 去年の春に掲載した「生きもの便り22」は、「今年の春は一挙に気温が上昇し、ウメ、コブシ、サクラ、モモ、モクレン等の花木が、ほぼ同時期に開化し、まるで北国の春のようでした」の文章で始まりましたが、今年の春は3月上旬から気温が上昇し、中旬には、我が家の近くのソメイヨシノは、一挙に満開になってしまいました。そんな中、娘は小学校を卒業し、中学校に進学したのですが、毎年の風物詩である満開の桜に迎えられた入学式風景は完全に葉桜の入学式になってしまいました。

 3月21日、春分の日の休みを利用して、毎年恒例のトウキョウサンショウウオ観察に家族全員で出かけました。
 いつもは、東京西部草花丘陵に位置する大荷田川流域の雑木林に出かけるのですが、今年は我が家から高速道路を使うと30分足らずで行くことができる三浦半島の生息地に行ってみることにしました。
 トウキョウサンショウウオは、本州の群馬以外の関東地方と福島県の一部ならびに愛知県に分布しているのですが、その内の東京都と愛知県の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群(環境省のレッドデータステータス)に指定されています。でも私の感覚からすると、三浦半島の個体群は東京の地域個体群と同等、もしくはそれ以上に絶滅のおそれのある個体群のように感じます。また、最近の知見では愛知県のトウキョウサンショウウオは、カスミサンショウウオに近いとされていて、何れ整理されると思います。


 さて、前置きが長くなってしまいましたが、横浜横須賀道路にのって目的地に向かって出発です。
 今日は天気も良く気温も高めなので、高速道路は海に向かう車で若干混み気味なのですが、芽吹きだした樹木で周辺の山々は薄黄緑色に衣をまとい、満開となったヤマザクラやオオシマザクラが彩りを添えています。本当に気持ちのいい季節です。
 ちょっとだけの時間ですが快適なドライブを楽しんだ後、横須賀インターチェンジ料金所近くに車を停めて観察の開始です。
イボタの新緑
 お彼岸のためか、綺麗に花が供えられた小さな墓地を通り過ぎて、谷戸を詰めていきます。毛虫が至るところで大発生していて、子供達の服やザックに付いてしまいます。子供達はキャーキャーと毛虫を払いのけ「もおーいやだー」とか言っていますが、なんだかそれを楽しんでいるように見えます。
 そうこうしている内に廃田の様な湿地帯に到着しました。土砂が随分貯まっていますが、大小の水溜まりが点在しています。
 イボタの新緑キブシの花が逆光に映え、林床ではイチリンソウスミレの花が彩りを添えています。
キブシの花
イチリンソウ
スミレの仲間
廃田の水溜まり

 最初の比較的大きな水溜まりを覗き込むとヤマアカガエルの卵塊アズマヒキガエルの卵塊が沢山ありました。既にオタマジャクシになって泳いでいるものもいます。子供達は卵塊を棒でつついたり、干上がった所にある卵塊を水場まで移してやっています。でもお目当てのトウキョウサンショウウオの卵嚢は見つかりません。そこで次の水溜まりに移って探すことにしました。

ヤマアカガエルの卵塊
アズマヒキガエルの卵塊
アズマヒキガエルの卵塊
孵化したばかりのオタマジャクシ
水溜まりを覗き込む家族



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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