その24 春の生きもの観察日記(カスミサンショウウオ調査)-2
さくちゃんの生きもの便り(その24)
春の生きもの観察日記(カスミサンショウウオ調査)-2


ムカシトンボ
 

 ヨシが生い茂る湿地を移動中に偶然、枯れたヨシの茎にとまっているムカシトンボも見付けました。
 このトンボは、日本特産種で北海道から九州まで分布しているのですが、生息地はかなり限定されていて目にすることの少ないトンボです。インドのヒマラヤ地方に分布するヒマラヤムカシトンボとともにムカシトンボ亜目というグループを形成しています。形態は不均翅トンボ類のサナエトンボに似ていますが、羽根(翅脈)はイトトンボ等の均翅トンボ類の特徴を持っている特異なトンボです。春から初夏にかけて年1回発生しますが、成虫になるまでに5年〜8年ぐらいかかるトンボです。

 もう少し標高の高い場所で、やっとカスミサンショウウオの幼生を見付けました。この場所から県境までの湿地には、ほぼ全ての場所で幼生が見つかりました。
 県境付近では標高が高いせいか卵嚢も見つかりました。卵嚢を最初に見付けたのはMさんです。まだ卵嚢があると言うことは、繁殖地に成体が残っていてもおかしくありません。そうなると成体も見付けたくなります。やっとの思いで僕とNさんが成体を見付けました。カスミサンショウウオの高地型と呼ばれるタイプです。
 カスミサンショウウオの高地型は中国山地の標高が高い地域と鳥取県の大山にしか分布していない、珍しいタイプのカスミサンショウウオです。体の模様の違いと後ろ足の指が4本しかないことが多いため(低地型は5本)区別できます。



カスミサンショウウオ(高地型)の
孵化間近の卵嚢
 

カスミサンショウウオ(高地型)の成体
 

 予定地での調査を終えて帰り支度をしていると、Nさんがモリアオガエルを捕まえてきました。そのカエルの写真撮影をしていると今度はMさんがモリアオガエルが沢山鳴いていると耳を澄ましています。鳴いている場所はNさんがカスミサンショウウオの成体を見付けた場所の近くのようです。

モリアオガエルが
繁殖に集まる池
無紋タイプのモリアオガエル
の成体(広島産)

 改めて近くの湿地を探してみると、草や低木の根元や湿地に張り出した高木の枝先に沢山の卵塊が産み付けられていました。
 モリアオガエルは樹上性のカエルで水面に張り出した木の枝に白い泡状の卵塊を産み付けるので、マスコミに登場することも多い中型で綺麗なカエルです。体色は黄緑色が一般的なのですが赤褐色の斑紋がある個体もいます。
 写真撮影をして全ての調査を終了しました。
 今回の調査でカスミサンショウウオ調査3連敗を免れることができました。


樹上に産み付けられた卵塊
孵化した後の卵塊
モリアオガエルのオタマジャクシ
上陸直後の幼体
赤褐色の斑紋が少し出た
成体(東京産)
赤褐色の斑紋が多く出た
綺麗な成体(愛知産)

 MさんやNさんに感謝しつつ今回の生きもの便りはこれでおしまいです。
 次回は、7月上旬に行ったバリ島の話しをしたいと思っています。

8月25日   さくちゃんこと佐久間聡


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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