さくちゃんの生きもの便り(その22) 春の生きもの観察日記−2
※すべて拡大写真ありマス

4月23日 トウキョウサンショウウオの観察日記


トウキョウサンショウウオが産卵する湿地

 今年の春は一挙に気温が上昇し、ウメ、コブシ、サクラ、モモ、モクレン等の花木が、ほぼ同時期に開花し、まるで北国の春のようでした。
 我が家の周りではサクラの花も終わり、新緑も色濃くなった4月の中旬に、「生きもの便りその14」で紹介した草花丘陵の雑木林にトウキョウサンショウウオを観察しに行きました。
 東京西部草花丘陵に位置する大荷田川流域の雑木林は、管理が行き届いていて実に気持ちのいい雑木林です。それに、新緑が色鮮やかで、自然の緑色の多様さに驚くばかりです。ヤマザクラもまだ咲いているし、平地部分にはナノハナやムラサキハナナも咲いています。
 新鮮で生きもの達の息吹に満ち溢れた空気を大きく深呼吸をして、雑木林の中に分け入ります。

春の雑木林
春の雑木林
ムラサキハナナ

 最初の湿地で多くのトウキョウサンショウウオの卵嚢を見付けました。50対近くあったと思いますが、水が干上がりかけているのが心配です。孵化したばかりの幼生もいました。卵嚢と幼生の写真を撮影して次の場所に移動しました。

 
写真
左:

トウキョウサンショウウオの卵嚢

右:

トウキョウサンショウウオの幼生


 次の場所は雑木林の中にある放棄された小さな棚田で、沢水が棚田跡地で水溜まりを作り、それがいっぱいになるとまた沢水となって下段の棚田跡地に流れ込むという階段状の繁殖地です。ここでも水溜まりの落ち葉をかき分けるとすぐに卵嚢を見付けました。おまけに産卵して間もない雌の成体も見付けました。
 通常雄は、産卵に訪れる雌をまって長い間繁殖場から離れないため、比較的観察しやすいのですが、雌は産卵を終えるとすぐに林内に帰ってしまうため、なかなか見付けられません。この日はラッキーな事に、2匹の雌を観察できました。


トウキョウサンショウウオの卵嚢
産卵を終えた雌
産卵を終えた雌

 トウキョウサンショウウオの観察を終えて、沢水で子供が学校で飼育するオニヤンマのヤゴを採集していた時の事です。

 近くの水溜まりの穴で「グッグッ・グッグッ」という、聞き覚えのある蛙が鳴いているではないですか。そーと近づいて覗いてみると・・・。いました。タゴガエルです。鳴いていた雄は何処かに逃げてしまいましたが、水溜まりの落ち葉の中から卵塊と雌を見付けました。雌は水分を吸収してぶよぶよに膨れ上がっていました。タゴガエルの仲間(特にナガレタゴガエル)は、繁殖期の水中生活時にはこの様な状態になるのですが、ここまでぶよぶよになったタゴガエルを見るのは初めてです。めずらしいので手にとって記念撮影をして逃がしてやりました。

 
繁殖期にぶよぶよになったタゴガエルの雌

 観察はこれでおしまいとし、気持ちのいい雑木林の中で、遅い昼食をとり、帰路につきました。来年もまたトウキョウサンショウウオやタゴガエルに会いにこの雑木林を訪れる事でしょう。


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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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