さくちゃんの生きもの便り(その21) 冬の沖縄生きもの紀行−5

 さて、毎年通って見続けていた観察フィールドが、一瞬にしてなくなってしまったので相当に落ち込んでしまっていたのですが、そうも言ってられません。
 工事が始まる前の今年6月に、子供達をこの渓流に連れて来てやってよかったなーと思いながら、工事がまだ進んでいない上流部で、イボイモリを探すことにしました。
 まず最初に見付けたのは林道を造っているすぐ近くの場所です。かなり大きな♀です。この場所は工事で潰されてしまいそうなので別の場所に移してやることにします。渓流を上流に詰めていきますが、なかなかイボイモリが生息するような環境がありません。かなり上流部に入ったところでやっと見付けました。ここは良さそうです。最初の石の下に2匹。次の石には1匹というように合計で6匹のイボイモリを見付けました。結局この日は10匹のイボイモリを観察することができました。

工事の影響がない場所に移したイボイモリ♀
イボイモリ三景


 渓流を引き返す途中でナミエガエルを見付けました。ナミエガエルは完全に渓流環境に依存し、世界中で沖縄本島の北部にしか生息していない貴重なカエルです。

写真:ナミエガエル

 また、林道工事を行っている場所で、リュウキュウヤマガメを見付けました。よく見ると甲羅が上下半分に割れかかっています。恐らく工事車両に踏まれたのでしょう。運良く窪地にいたからペッチャンコにならなかったのだと思います。空しい思いで長年通い詰めていた渓流を後にしました。

甲羅にひびが入ったリュウキュウヤマガメ

 3時を回っていたのでホテルに戻り、夜の調査に備えます。夕食を済ませ6時30分にホテルを出発し、昼間入った渓流に向かいます。渓流に入って最初に見付けたのが背中が茶褐色タイプのニホンカジカガエル、続いて見つけたのがナミエガエルとホルストガエルです。ホルストガエルはナミエガエルと同様に世界中で沖縄にしか生息していない大型のカエルです。

背中が茶褐色タイプのニホンカジカガエル
ホルストガエル

 さて極めつけはイシカワガエルの登場です。これで沖縄本島に分布する県の天然記念物3種の揃い踏みです。イシカワガエルは日本で最も美しいといわれるカエルで、世界中で沖縄本島北部と奄美大島にしか分布していません。沖縄本島で最も見付けにくいカエルです。
 最初の1匹は私が見付けたのですが、その後は妻の独壇場です。繁殖期にはまだ早かった様ですが、今年上陸したと思われる幼体を含めて、4匹のイシカワガエルを観察することができました。
 ライトを消すと月明かりで渓流や渓流に張り出す樹木が青く輝いています。飛行機が飛行機雲を出しているのも見えます。ヤンバルの夜空には本当に感激させられっぱなしです。

イシカワガエル(幼体)
拡大写真ありマス

 さあ、今日の観察はこれで終了です。ライトを消したまま、月明かりの美しさと今日の観察成果に満足しながら、心地よい疲労を携えて渓流を後にしました。
 翌10日は、昼前にホテルをチェックアウトし、サミット会場と新しくできたリゾートホテルを見て、ついでに食事をして、牧志の公設市場で食材を買い込み家路に付きました。



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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