さくちゃんの生きもの便り(その21) 冬の沖縄生きもの紀行−6

 何度もこの生きもの便りで書いていることなのですが、沖縄の豊かな自然や文化は、我々日本人が誇れるものの一つだと思います。
 沖縄を問わず、豊かな自然や文化を次世代に引き継ぐことは、我々の義務ではないかと思うのです。
 
 今沖縄で行われている開発行為は、自然と共生し、永続的に自然を活用していくという視点に乏しく、単に自然を食い潰している行為の様に感じます。私は自然を保護するために、地域住民の生活を犠牲にする必要はないと思っています。極端に言えば、たとえば人間が餓死しそうになればイリオモテヤマネコだろうがヤンバルクイナやノグチゲラだって食べて当たり前だと思っています。
 ただ、無駄な開発行為により消失する貴重な自然を、黙って見ているわけには行きません。沖縄北部に広がる山原の原生林に網の目のように建設されている林道は、建設行為と補修行為だけの経済効果しかない、建設業者のための道路と言っても過言ではありません。
 私達が子供の頃は、家の回りにも豊かな自然が沢山残っていました。私達はそこで自然との触れあいを通じて、自然の大切さや自然との接し方を学んできました。心にゆとりや潤いを取り戻したり、友達同士や親子の相互理解を育んだ場所でもあります。
 人間が生物の一員である以上、人工的な環境だけに依存して永続的な繁栄はあり得ません。だから今ある自然を計画的に、なるべく壊さないで次世代に繋げる必要があると思うのです。社会環境の豊かさ(物質的な豊かさや人工的な住環境の豊かさ)は、科学技術や建設技術の進歩で得られるものですが、豊かな自然環境は、一度無くしてしまうと回復するのに百年単位の時間がかかってしまいます。
 自然保護とは、希少生物を保護したり、弱い生物を保護することが窮極の目標ではなく、人間の永続的な繁栄のための環境保全・環境整備なのです。
 自然を保護するということは、人間を保護する事だという理解が必要です。けっして他人事ではないのです。私達みんなのために自然を保護することが必要なのです。
 目先の欲にとらわれず、みんなの手で残された自然を大切にし、活用していきたいものです。そして、いつまでも精神的な豊かさ・心の豊かさを持ち続け、自然に対して謙虚でいたいと私は思っています。


森林伐採現場
森林伐採跡地の斜面崩壊地
大規模造成を行った大国頭林道
林道沿いの風倒木

 最後は堅い話をくどくどと書いてしまいました。
 さて早いもので、今年も終わろうとしています。今年一年ご愛読いただきまして本当にありがとうございました。

 今年の生きもの便りは、少しマニアックな内容が多くなってしまったきらいがありますが、来年もできるだけコンスタントに、身近な生きものを中心にそれらの話を掲載していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
 21世紀最初の年も皆様にとって良き年となりますようお祈り申し上げます。

12月15日  さくちゃんこと佐久間聡
沖縄の夕日

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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