さくちゃんの生きもの便り(その21) 冬の沖縄生きもの紀行−1
※拡大写真ありマス

 12月 8日から10日までの 3日間という短期間ですが、冬の沖縄に行って来ました。
 今回の目的は、イボイモリの生息している環境の調査とイシカワガエルの生態写真を撮影することです。
 イボイモリの生息環境調査は、去年生息を確認した場所に再度訪れ、同じ石の下にまだいるかどうかを確認すること。また他の場所で同様の環境の場所を見付けて、そこにイボイモリが生息しているかを調査することです。そしてこの調査結果から、イボイモリの生息・生育環境と住処の環境条件を考察することです。
 イシカワガエルの生態写真撮影については、過去に何回か見付けたことはあるのですが、ストロボを忘れて撮影できなかったり、写真の出来が良くなかったりで、満足の行く写真が得られていないため、今世紀じゅうに結果を出したかったからです。
 というわけで今回も妻にアシスタント役をお願いし、今年3回目の沖縄行きを決行したのでした。妻と二人で沖縄に来るのはこれで3回目。今までの実績から今回も大活躍をしてくれることは間違いありません。めきめきと腕を上げる妻におんぶにだっこを決め込んで、12月8日早朝に我が家を出発し、9時30分に那覇に到着しました。
 羽田空港から那覇空港までの移動中は、富士山を眺め、雲の上に浮かぶ円形の虹の中に飛行機の陰が写る幻想的な現象を眺めてすごしました。また沖縄に近づいてくると、奄美・徳之島の上空を通過し、伊平屋島を掠め、慶良間・久米島を望みながら南部を旋回して那覇空港に降り立つという、動物好きにはたまらないコースで大満足(ここのルートをトカゲモドキルートと勝手に命名)。島を通過する毎に、それぞれの島の自然環境やそこに生息している生きもの達を妻に説明しながら、時間を過ごしました。ん〜ん・・・なんとなく良い予感のする旅のスタートだなあ〜〜。

 さて、まずはおきまりのコースで牧志の公設市場に直行です。ゴーヤやそうめんチャンプル、紅芋の天ぷら、ラフティー、島らっきょう、グルクンの唐揚げ等を足早に買い込み北部に向けて出発しました。
 今日の昼間の予定は名護岳と瀬底島の調査です。名護岳は学生時代にチョウチョの採集のため何度も通った懐かしい場所です。まさかイボイモリを観察するために再訪するとは思ってもいませんでした。文献ではイボイモリの生息密度が高そうなので林道沿いの沢や湿潤地で簡単に見付けられると思っていたのですが、そううまくはいきません。結局成果はゼロ。早々にあきらめて瀬底島に向かいました。

 この島も文献で過去にかなりの個体が生息していた記録のある場所なのですが、去年の調査では1匹も見付けることができませんでした。そういう意味で今年はリベンジ。生息していそうな場所の石や倒木等を次々とひっくり返すのですが、やっぱり見つかりません。いたっ、と思ったらシリケンイモリです。シリケンイモリは奄美大島とその属島、沖縄本島とその属島に分布するイモリです。それぞれ別亜種になっていますが、個体変異が大きいため区別がつきません。そこで我が家で飼育している色々なタイプのシリケンイモリの一部を紹介(自慢)しておきましょう。(a〜c、e、f はさくちゃんコレクション。dは川村氏から繁殖のために借りている通称白雪姫。)
 

シリケンイモリ
 
シリケンイモリ班紋バリエーション 
a.無斑タイプ
b.白斑が少し出たタイプ
c.白斑と赤ラインが多く出たタイプ
d.全身が白斑のタイプ
e.赤斑が多く出たタイプ
f.赤斑と白斑が全身に
多く出たタイプ

 さて、話しを戻すと、半分やけになって石をどんどんはぐっていきます。でもやっぱりいません。おまけに、石はぐりに夢中になっていたため、とぐろを巻いているハブに1m位の距離で接近遭遇。機嫌を損ねて噛み付かれなくてほっと一息です。カメラを構えて何枚かの写真を撮った時点で妻を呼び寄せました。妻曰く「他のヘビと全然違うのね〜大きいし筋肉質だし・・・でもきれい・・・絣の模様みたい」。絣模様を想像するあたりが何とも鋭い。


森の守り神ハブ

 森の守り神に敬意を表して(本当はびびって)、その場を退散。結局この場所でも成果はゼロ。瀬底島にはイボイモリが繁殖できそうな場所も少ないし、過去の繁殖場所が農業用の貯水池に整備されたため極端に個体数が減ったか、絶滅したのではないかと思われます。
 先行き真っ暗な状態で定宿にしている奥間にあるリゾートホテルに向かいました。ホテル到着後、事前に送っていた夜間調査用具を受け取ったり、早めの夕食を済ませたりしながら日が暮れるのを待ち、夜間調査に出かけました。



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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