さくちゃんの生きもの便り(その16)
春の渓流散歩(ハコネサンショウウオを探しに)-2

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 5つ目の砂防堤を超えたあたりから、やっとハコネサンショウウオがいそうな環境になってきました。ここからは腰を据えてサンショウウオ探しです。本流の淀みや伏流水のある護岸の浮き石を1つ1つはぐっていきます。最初に飛び出してきたのは「生きもの便り」その10でも紹介したタゴガエルです。

 タゴカエル

 石の下や裏に産み付けた卵塊も見つけました。卵塊は小さいのですが、大きくて光沢のある綺麗な卵です。淀みでは孵化したばかりのアズマヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)や越冬したツチガエルの幼生も見つけました。でも目的のハコネサンショウウオは見つかりません。6つ目の砂防堤が現れました。ここで見つからなかったら引き返すつもりで砂防堤でできた淀みを探ります。まず最初にタゴガエルが出てきました。期待を持って別の石をはぐります。いました。今年の夏に上陸すると思われる、8cm近くに成長したハコネサンショウウオの越冬幼生です。ハコネサンショウウオの水生幼生期間(孵化して上陸するまで)は、他のサンショウウオと違い3?4年もかかるのです。無事、写真撮影を済ませて、渓流を下ります。カジカガエルが「フーィ、フィフィフィフィ」と良い声で鳴き初夏のおとずれの近さを知らせてくれています。


石の下に産み付けられた卵塊
石の裏に産み付けられた卵塊
タゴカエルとアズマヒキガエル、
ツチガエルの幼生
ツチガエルの幼生
ハコネサンショウウオの越冬幼生
ハコネサンショウウオの越冬幼生

 昼食を食べた場所で後かたづけをして、砂防堤を1つ1つ慎重に降りていきます。大きな砂防堤の管理道路で子供達が変な虫がいると呼んでいます。近寄って覗き込むと本当に変な虫のヒメツチハンミョウです。ぶよぶよの体ですが、これでもカブトムシやカミキリムシと同じ甲虫の仲間です。

ヒメツチハンミョウ

 このツチハンミョウの幼虫は、ハナバチ類の巣に寄生して成長し秋に羽化しますが、成虫の状態で土の中で越冬し、春から初夏にかけて出現する珍しい生態の持ち主です。また、体液中にカンタリジンという成分を含むため漢方薬として使われることもあるそうです。
 ツチハンミョウの生きている姿を見たことがなかったので、感激しました。そして、子供達や妻の生きものを見つける感覚が、目に見えて向上してきているのを実感させられる出来事でもありました。なお、妻の生き物を見つける才能は、2週間後の久米島での生きもの観察においても、遺憾なく発揮されることを、この時点では知る由もありませんでした。

 では、今回の生きもの便りはこれでおしまいです。
 今回紹介した生きものの内、ウスバカゲロウの幼虫は、民家や社寺の軒下でも見つけることができると思います。ぜひ、探してみて下さい。

5月20日 さくちゃんこと 佐久間聡

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文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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