さくちゃんの生きもの便り(その20)
パプアニューギニア昆虫採集の旅−6
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 12月31日いよいよパプアニューギニアでの最後の採集日です。
 カザリシロチョウの採集目的で、わざわざパプアニューギニアまで来たのに、悲しいかな、まだ1匹のカザリシロチョウも採集していません。
 今日はカザリシロチョウの産地として有名なワウ村のナミ渓谷での採集です。カザリシロチョウ採集のラストチャンス。天候だけが心配です。

 カザリシロチョウの仲間はインド・オーストラリア区に分布し、230種程度の大きなグループからなり、どの種も一様に後翅の裏面に綺麗な模様があります。その中でニューギニア島には100種程度が分布しています。何れも中型から小型の大きさで斑紋も変化に富み可憐な蝶々です。さくちゃんこと、この私は、カザリシロチョウに取りつかれ、採集や収集、研究を始めて早20年。5種類の新種・新亜種を記載するという成果を上げることができましたが、未だに飽きることのない興味深い蝶々なのです。 ブロロ村からワウ村へ向かい、山道に入って高度を増すにつれ、樹冠を飛ぶカザリシロチョウが見られるようになりました。天候もまずまずです。



渓流沿いのカザリシロチョウの採集地

 渓谷に到着し、上流部に陣取ります。カザリシロチョウは、吸水のため谷底めがけて次々と舞い降りてきます。最初に採集したのはリガタカザリシロチョウの雌です。おもわずラッキーと心で叫びます。初めの内は、あわてて振り逃がしたりもしましたが、落ち着きを取り戻してからは多数のカザリシロチョウを採集することができました。


ニューギニア島産のカザリシロチョウ達(さくちゃんのコレクションのほんの一部)

 集合時間が近づいてきたため谷を下りようと準備していると、上流からものすごいスピードで中型の黒い蝶が飛んできました。反射的にネットを振ると網の中でバタバタと暴れています。

 ネットを覗き込むと「娘がお土産に採って来てね」と言っていたミイロタイマイでした。
 ミイロタイマイは、日本のアオスジアゲハと同じ仲間なのですが、半透明な緑とピンクと青色の3色で彩られた大変美しい蝶々で、光に透かして見るとステンドグラスの様です。この模様が飛んでいるときには目立たないのは意外でした。



ミイロタイマイ♂
 

 充実した採集を終えロッジに戻るワゴン車の中で、三角ケースに収まる採集品を眺めて、カザリシロチョウコレクターは始めて密かな微笑みを浮かべるのでした。



文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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