さくちゃんの生きもの便り(その5)
テントウムシとヤツホシツツハムシの関係(ベイツ型擬態)


  5月9日に横浜にある「寺家ふるさと村」に家族で行って来ました。
 
ここは谷津田や畑、雑木林が比較的沢山残っていて、多くの生き物を観察することができるので、お気に入りのフィールドです。 この日は、天気が良かったのでシマヘビやカナヘビ等の爬虫類も沢山見ることができました。両生類では、ニホンアマガエルやアマガエルによく似たシュレーゲルアオガエル、食用のために日本に持ち込まれて野生化したウシガエルを見つけました。
  昆虫では、シオヤトンボやギンヤンマに似たクロスジギンヤンマ等のトンボ類、モンキチョウやダイミョウセセリ等のチョウの仲間が沢山飛んでいました。コクワガタもコナラ(ドングリの木)の幹で4匹も見つけることができました。


ニホンアマガエル
クロスジギンヤンマ

※これらの写真は、クリックすると拡大写真が表示されます。
どれもとてもきれいですが、特にクロスジギンヤンマは是非ご覧ください。


  小さいけれど金属光沢が綺麗なジンガサハムシや最近日本に進入した帰化種のブタクサハムシも見つけました。カラスノエンドウやムカシヨモギの葉にはテントウムシが沢山いました。ナナホシテントウナミテントウです。これらの写真を撮影しているとナナホシテントウにそっくりな別の昆虫がいるのに気付きました。テントウムシに擬態しているハムシの仲間のヤツホシツツハムシです。


ジンガサハムシ
ナナホシテントウ

ナミテントウ
ヤツホシツツハムシ

 皆さんは、テントウムシを捕まえた時に、黄色から赤みをおびた体液で手を汚された経験はないですか。この体液は、苦く、いやな匂いがして、しかも有毒物質が含まれています。テントウムシは、天敵から身を守るためにこの液体を分泌するのです。テントウムシの派手な色彩や模様は、わざと天敵に目立つようにして、自分が美味しい餌でないことを知らせる警戒色なのです。
  一方、ヤツホシツツハムシは無毒で、天敵に対抗する何らかの防御方法を持たない昆虫です。そこで、有毒のテントウムシの派手な色彩や模様に似せて、天敵に対してテントウムシだと思わせて身を守っているのです。この様に、味の悪い生物や有毒の生物の真似をして身を守るような関係をベイツ型擬態といいます。また、味の悪い種や有毒の近縁種同士がそっくり似たような色彩や模様を持って、天敵に対して防御効果を高める関係をミューラー型擬態といいます。 皆さんがよく知っている擬態は、木の幹や枝、葉等、周りの環境にそっくりな形や色彩をして、天敵に目立たなくすることで身を守る方法だと思いますが、擬態には、テントウムシとツツハムシの様に様々なタイプがあるのです。
  小さな生き物達も様々な工夫をして一生懸命生きています。これらを観察していると、元気を与えられたような気持ちになるのは僕だけでしょうか。きっと、子供達も・・・。

 では、次回をお楽しみに。


1999年5月19日

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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